今日も練習が終わって夕食を皆で食べていた。この時間に私の目が行くのはいつも独りで食べている不動の方。何故かはわからないが気になる存在であるのは確かだった。髪型がすごい所為もあると思う。 今日の不動はバナナを食べていた。私や皆には無かったのに。一人だけデザート有りはずるいと思った。私はいつもに増して熱い視線を横顔の不動に送った。すると不意にその視線が不動とぶつかった。慌てて目を反らしたが不動がニヤリと笑うのが目に入った。この恥ずかしさったら無い。終始俯いていると肩をポンポンと叩かれたのでそちらに顔を向けると口に何かを入れられた。 「んぐぅ!?」 今の状況を簡単に説明すると不動が私の口にバナナを突っ込んだのである。なにすんの!と叫びたくても上手く喋る事も出来なかった。 「おい!不動!お前何やってるんだ!」 皆の目が点になっている中で向かいの席の鬼道が代わりに言ってくれた。ありがとう、鬼道。 「何って、こいつが物欲しそうに俺のバナナを見てきたからあげただけだよ、なあ?名前チャン?」 不動がバナナをさらに押し込んで来た。苦しくなって両手で不動の腕を掴んでもびくともしなかった。 「あらら、涙目になっちゃった?可愛いー」 そんな事を耳元で言うものだから顔も赤くなった気がした。不動がクツクツと笑う。 「名字、噛み切れ」 豪炎寺が冷静に指示してくれた。流石豪炎寺、突っ込まれた衝撃で頭が回らなかったよ。私は口の中にあるバナナを食べた。 「チッ、つまんねえの」 不動は残りのバナナをまた私に突っ込んで部屋に戻っていった。 「名前、大丈夫?」 ヒロトが心配してくれる一方で私の心臓のドキドキが止まらなかった。私は残りのバナナを食べながら言った。 「バナナおいひい」 みんなが呆れたように笑った。 「呑気な奴だな」 そういう鬼道の顔は引きつっていた。多分鬼道があれをやられたら怒り狂っていただろうな。私は心臓がうるさくてそれどころではなかった。 「なんだろう、この気持ち」 バナナを完食した後はそればかりが頭を占領した。 (20100928) |