不機嫌なのが一目でわかった。唇を突き出し眉間には皺、かったるそうに頬杖を付いて窓の外を見ている。俺が登校した事なんて無視だ。いつもだったらうざいくらいおはよう、おはよう言ってくるのによ、一体何なんだ。

「おい、名前」

「………」

試しに声を掛けると案の定無視された。どうやら本当に俺に腹を立てているらしい。俺も無視された事にむかついたが喧嘩してる所を源田や佐久間に見られるのは嫌だったからそれきり話し掛けはしなかった。



次は音楽、これまであからさまに避けられていたが(廊下で会うと烈風ダッシュ並みの速さですれ違ったり、休み時間は友達と屯して俺が話し掛けられない雰囲気を作った)、隣の席が名前だから話せるかもしれない。音楽室に行くともうすぐ始まる時間なのに名前が居なかった。

「名字さんがいないわね」

「名前ちゃんは保健室で寝てまーす!」

まじで頭にきた。今ならリコーダーが折れそうだった。

「不動、すごい顔してるが名字の事が心配なのか?」

「黙れ、源田」

「………」





学校が終わり、俺は名前と話をつける為名前を探そうとしたらいきなり後ろから手を引っ張られた。

「あっぶねーな」

後ろに振り向くと引っ張った犯人は名前だったのがわかった。今まで避けられていたから若干目を見開いて驚いた。

「来て」

俺と決して目を合わさずに言った。名前に手を引かれて行き着いたのは4階にある空き教室だった。名前はドアを閉めるとこう切り出した。

「昨日一緒に居た子誰」

「はぁ?」

「誰って言ってんの!」

今まで抑えていた感情が一気に湧いて出たように見えた。昨日一緒に居た奴……?気に留めるような事は無かったと思うが。

「ピンクの髪の子!白切るつもり!?」

「あ、まさか小鳥遊の事か?」

「昨日の夕方、二人で歩いてるのバスから見た」

俺は昨日偶然小鳥遊とコンビニで会った事を思い出した。会ったと言っても、その後ただ帰る道が一緒だっただけだ。

「ただの部活仲間だよ」

名前は疑り深く俺を見た。

「その子可愛かった」

そう言うと名前の目から涙が溢れた。流石に焦った。

「明王もかっこいいし、すごいお似合いだった」

名前はわんわん声を上げて泣いた。

「な、何言ってんだよお前」

「絶対、私より、その子の方が、いいんだ!」

名前は嗚咽交じりにまだこんな事を言っている。

「やっぱ、お前は馬鹿だな」

「な、なによ!」

睨み付ける名前を俺はきつくきつく抱き締めた。

「うわっ、は、離してよ!」

「俺が好きなのはお前だけだ」

そう言うと名前は暴れるのを止めた。

「本当?」

「そうだよ、あんま言わせんな」

名前の顔がぱあっと笑顔に変わった。そして俺の胸に顔を埋めて俺をぎゅうぎゅう抱き締めた。

「明王ー!!」

「もう勘違いすんじゃねーぞ」

「うん!」

そして俺達は日が暮れるまでここに二人で残った。



(20100925)









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