朝から大変だ!



二度目の登校。一人で円堂くんから教えてもらった道を辿る。
一人は寂しい。何かの拍子で豪炎寺くんと二人で登校する事にならないかな、ってどんだけ私は夢見がちなんだろう、と思いながら歩いていると見覚えのある後頭部が何メートルか先に見えた。あの髪型、絶対豪炎寺くんだ!
な、なんということなんでしょう!夢が叶いそう!声掛けたい、挨拶したい、と脳内ではフィーバー状態なのに実行に至れないのが私のダメなところ。緊張で歩く速度が極度に遅くなってどんどん私と豪炎寺くんの距離が伸びる。だって声掛けても会話が続かなかったら気まずいし、もし忘れられてたらどうする?「誰だっけお前」なんて言われたら死ぬよ!

そんな葛藤が繰り広げられる中で前方の斜め左方向に一台の真っ黒な車が止まった。高そうな外車だ。まさかここまで送ってもらったのかな、うわ、ドアも自動で開いたよ、こりゃ相当なお坊ちゃんだ。
それからそのお坊ちゃんが降りてきた。私はその人を見て絶句した後思い切り吹き出した。だって見覚えのありすぎるドレッドとゴーグルとマントを身に纏っていたものだったから。その人はマントを翻して振り向いた。


「おお、名字」
「き、鬼道くん!?」
「おはよう」
「お、おはよー」


鬼道くんならこうやって普通に挨拶出来るのに!(ていうかお坊ちゃまって突っ込めなかったああ!オーラが威圧的!)ああ、もう豪炎寺くん行っちゃいそう!私は小さくなった豪炎寺くんを見つめた。それに気付いたように鬼道くんが振り返った。


「お、豪炎寺じゃないか」
「あああ、ほほほんとだ、豪炎寺くんだね」
「おーい、ごーえんじー!」


なんとあろう事か鬼道くんが豪炎寺くんを呼んだ。私は口から心臓が飛び出しそうになった。しかも豪炎寺くんが振り向いたもんだから本当に飛び出すんじゃないかと思った。


「行くぞ」
「ちょ、待って」


私は豪炎寺くんの方に行こうとした鬼道くんのマントの裾を握った。


「何だ」
「あ、ごめん」


私は裾から手を離した。すると鬼道くんが鼻で笑った。私はそれにちょっとむかついて俯いていた顔を上げると口角を釣り上げていた鬼道くんに耳元で言われた。


「お前、豪炎寺の事好きだろ」


私は驚いて動けなくなった。風丸くんに続いて鬼道くんにまで知られてしまった。否、自己申告に近い風丸くんはいいとして、鬼道くんは鋭すぎやしないか。本当にびっくりだ。


「図星だな、顔が赤い」
「うっそ、どうしよう」
「お前意外に馬鹿だな」
「な、なにを!」
「フッ、ほら、行くぞ」
「あー!また鼻で笑った!」


スタスタと歩いて行く鬼道くんの後ろで私は「早く赤いの治れ」と頬っぺたを擦った。大きくなってくる豪炎寺くんに高鳴る胸を必死に抑えた。

遂に実物大の豪炎寺くん(私よりも身長高くてどきどきする)を目の前にした私は少し気圧されながらも大きく挨拶した。


「おおお、おはよう!」


吃りまくりで私はかっこわるかった。隣で鬼道くんがニヤついている。絶対鬼道くんドSだ。


「おはよう」


初めての豪炎寺くんの挨拶は爽やかでかっこよくて朝から刺激が強過ぎました。それにここから教室まで一緒かと思うと鼻血が出そうです。でもとんでもないくらい幸せです。









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