勘違い仲違い



興奮覚めやらぬ中、私よりテンションの高い円堂くんは私の手を引き走りだした。


「名字!来いよ!」
「う、うん!」


なんだなんだと思いながらも円堂くんに他の皆も全員引き連れて部室に連行された。そして部室のドアを開いた瞬間に爽快な爆発音がなった。


「わっ!」
「ようこそ!サッカー部へ!」


クラッカーを持った女の子が二人でお出迎えしてくれた。長い綺麗なウェーブのかかった茶髪の美人さんと頭に赤縁メガネを掛けている可愛らしい子。二人ともマネージャーなのかな。部室を見回すと手作り感溢れる装飾が施されていた。輪飾りなんて久しぶりに見たかもしれない。


「さっき俺等でやったんだぜ!」
「わー!ありがとう!」
「円堂くんから新しいマネージャーが来ると聞いてね、私もやったのよ?」


綺麗な子が威圧的に言った。すごいオーラを感じる。


「とか言って、お前も嬉しがってたじゃないか!」
「そーですよー!」
「う、うるさいわねっ」


円堂くんと赤縁メガネの子にそう言われて美人さんがちょっと顔を赤らめて目を反らして言った。あ、多分この子ツンデレってやつだ。私は笑顔で言った。


「ありがとう!」
「ど、どういたしまして」


つっけんどんに綺麗な子が答えた。私はちょっと苦笑いぎみだけど嬉しかった。


「あ!名字!お前自己紹介しろよ!」
「あ、うん!」


私は部員みんなの前に一人だけ前に出て向き合った。


「私、名字名前です!改めてよろしく!」


そしてお辞儀をした。みんながまた一斉によろしく、と返してくれたのが嬉しかった。それからみんながそれぞれ私に自己紹介してくれた。その途中、私は水色ポニーテールの子に声を掛けた。


「女の子一人だけなのに頑張っててえらいね!よろしく!」


私が手を差し出してそう言うと時間が止まったような静寂がさっきまであんなに賑やかだった空間に訪れた。目の前の水色ポニテの子も何故か硬直していた。


「………あれ?」


すると一人の男の子が水色ポニテの子の肩を叩いて笑い始めた。確か半田真一くんだ。それを皮切りにみんなが大小様々な笑い声を上げた。あ、豪炎寺くんまで笑っている!レアだ!


「あはは!風丸女だと思われてやんの!」
「え、ま、まさか」
「そう!こいつ男!」


半田くんが俯く水色ポニーテールの子、もとい風丸くんの頬を指で突きながら衝撃的な事を言った。え、女の子にしか見えなかったよ。


「うっそ」
「嘘じゃなああああい!」


風丸くんがそう叫んで部室を飛び出して行ってしまった。やばい、楽しいハッピースクールライフの始まりそうそうこれだ。流石私。どうしよう。私が呆然と開きっぱなしにされた扉を見ながらつっ立っていると目の前に秋ちゃんが来た。


「名前ちゃん、後で風丸くんに謝ってあげてね」
「う、うん、もちろん、あー、悪い事しちゃったなあ……」
「名字、お前最高だな!あはは!」


半田くんは未だに茶化してくる。正直うざい。秋ちゃんが親指を立てた手を後ろの扉に向かって突き出した。


「半田くんも謝ってきなさい!」
「はいぃぃ!」


情けない声を出した半田くんに今日一番の笑いが降り掛かる。私はお詫びの言葉を探すのに必死であった。それに気付いてくれたのか、苦笑いをした豪炎寺くんが声を掛けてくれた。


「こういう事もあるさ」
「う、うん!」


豪炎寺くんが仏様に見えた。なんてかっこいい仏様なんだろう。私は涙を流しそうになった。








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