試合開始のホイッスルが鳴った。あ、審判をやってる子、今朝席を譲ってくれた子だ。マネージャーやってるのかな。しかし、それにしても豪炎寺くんが言っていだサッカーの面白さを教えてやる゙とはどういう事なんだろう。ただ試合を見せられただけで私の考えがたとえあの豪炎寺くんでもそう簡単に変わるとは思えなかった。それにいくら私が豪炎寺くんの事が好きだとしても豪炎寺くんが居るからというだけでサッカー部に入る気にはなれないよ。 今ボールを持っている人はドレッドヘアーでゴーグルの人。そしてその人と水色の髪の人が接触した。どうせ大した動きも無くボールをどちらかが取りどちらかが保つのだろう。ただそれだけの事だとしか思えない、実に退屈なスポーツだ。 「イリュージョンボール!」 私は自分の目を疑った。ゴーグルの人が青いマントをなびかせてまるでボールを操るかのように宙に浮かせてポニーテールの子をかわしたのだ。初めて見る光景に私は驚愕した。そしてゴーグルの人は空に向かってシュートした。あーあ、せっかく死守したボールなのにそれじゃ誰も取れないだろうに。すると豪炎寺くんが高くジャンプをした。 「ファイヤトルネード!」 豪炎寺くんは回転しながらシュートを放った。それは炎を帯びており私から見ても強力な物に見えた。ゴールキーパーにはさっきの緑頭の巨体の人が着いていたが、あまりのシュートに避けてしまいゴールに入った。衝撃でゴールネットが完全に伸び切っていた。 「す、すごい……!」 「ね、すごいでしょ」 そう声がした方に振り向くとさっきまでグラウンドを挟んで向こう側に居た黒髪の子が居た。 「私、木野秋!よろしくね、名前ちゃん!」 「よ、よろしく!秋ちゃん!」 私の名前を覚えてくれていて純粋に嬉しく思った。笑顔が可愛くっていい子だな。 「豪炎寺くんのシュートもすごいけど、あのシュートを止める方もすごいのよ?」 「えっ!」 あんなシュートを止めるなんて本当に出来るのだろうか。 「あっ、ほら来た」 秋ちゃんが優しい微笑みを投げ掛けたその先には他の人とは違う色のユニフォームを着た円堂くんが居た。 「みんな!何やってんだ!?」 「キャプテンー!俺にはキーパー出来ませんっすよー!」 キャプテン。円堂くんはキャプテンだったのか。正に第一印象とぴったりだった。緑頭の人がキーパーではないとなると、円堂くんがキーパーなのかな。ユニフォームの色違うし。 「円堂!今名字にサッカーの面白さを教えてやるために試合をしてるんだ!」 「そうなのか!」 豪炎寺くんが円堂くんに呼び掛けた。すると円堂くんはグローブを付けながらキーパーの位置に付いた。 「円堂くんは雷門サッカー部のゴールキーパーでキャプテンなの」 「ぽいね」 「えっ」 「初めて会った時そんな感じがしたから」 秋ちゃんはどこか困惑したような表情を見せた。なんでなんだろう。 「よし来い!豪炎寺!!」「ああ!行くぞ!円堂!!」 豪炎寺くんがまたあのすごいシュートを放った。そのボールは勢いが劣ろえる事を知らずに円堂くんに迫った。円堂くんが真っ直ぐ腕を伸ばして掌をボールに向かって構えるとそこからとんでもなく大きな手が見えた。 「ゴッドハンド!!」 シュウウ…、回転したボールは煙を立てながら止まった。円堂くんは豪炎寺くんのシュートを止めたのである。 「止めた……!?」 「ね?すごいでしょ?」 秋ちゃんはにっこり笑っていた。私はただただその光景に目を奪われていた。 「豪炎寺、もういいんじゃないか?」 「そうだな」 ゴーグルの人が豪炎寺くんに声を掛けた。どうやらもう試合は終わりらしい。私はもっとしてほしいという気持ちが私の中に生まれて驚いた。本当にサッカーに興味が湧いたんだ。豪炎寺くん、否、ここのみんなはすごい。 「どうだ?」 豪炎寺くんの声がした。いつの間にか豪炎寺くん達が私の周りを囲んでいたのだった。それに気付かないくらいサッカーについて考えている事にまた驚いた。私はベンチから立ち上がって言った。 「サッカー、すごい面白い!!」 豪炎寺くんはみんなと顔を見合せて少し微笑んだ。円堂くんは万歳をして喜んでいた。微笑んだ後豪炎寺くんが言った。 「じゃあマネージャー、やってくれるか?」 「うん!」 豪炎寺くんはまた微笑んだ。それがまたかっこよくてときめいた。 「みんな!よろしくね!」「おう!」 みんなが声を揃えて言うものだからそれが全身に響いて武者震いのような物を感じた。サッカー部、楽しくマネージャーやっていこうじゃないか! |