これが一目惚れってやつ?



今日から父の仕事の都合上で東京へ引っ越す事になり、当然私も学校を変える事となった。前の学校の友達に会えなくなって寂しかった。それに初めての転校で緊張している。なにより今、その転校先の学校に登校しようとしている所なのだがまだ土地勘が無くて道に迷っている。またこの道だ、同じ道をぐるぐると彷徨っているようだ。


「初登校から遅刻かあ……」


そう言って溜め息を吐いた。もうこの曲がり角を曲がるのは三回目だった。その直後私の体に衝撃が走り私は尻餅をついていた。


「いったー…」
「ごめん!大丈夫か!?」


大きな声で申し訳なさそうにそう言われた。私は差し伸べられた手を使わせてもらって立った。ぶつかった人は頭にオレンジ色のバンダナを巻いていた。


「あれ?お前って雷門中か?」


そう言った彼をよく見ると学ランの肩の所に稲妻の模様があった。私の目は希望の光が宿るような感覚を覚えた。


「そう!今日転校してきたんだけど道に迷ってたんだ!」
「だったら一緒に行こうぜ!俺が案内してやるよ!」「ありがとうー!」


よかった。本当によかった。これで遅刻は免れただろう。彼に付いて行くと五分も経たずに雷門中に着く事が出来たがこんな短距離で迷っていたと知り少し恥ずかしくなったが、私はそれを振り切ってお礼を言った。


「本当にありがとう!」
「おう!今度から気をつけろよな!」
「うん!あ、職員室ってどこ?」
「そっち行って右!」
「ありがとう!」
「じゃあな!」


手を振って私は彼と別れた。本当にいい人だ。ああいう人が委員長とか、リーダーとかに向いているんだろうなと思った。


「あ、名前聞くの忘れた」


まあ同じ学校だからまた会うか、と思った後私は職員室に入って担任の先生にこれから過ごすクラスに連れて行かれた。


「適当に自己紹介お願いな」
「はい」


嫌な緊張感に付き纏われて私は息が詰まるような感覚に襲われた。先生が教室に入って行く瞬間に大きく深呼吸をして私も教室に足を踏み入れた。


「はじめまして、名字名前です。よろしくお願いしま…」
「あー!さっきの!」
「ああ!」


私は先程ここまで連れて行ってくれた彼と指差し合った。こんなとんでもなく早い再会、予想もしていなかった。


「なんだ、円堂知り合いか、じゃあ席は円堂の隣でいいな、木野、他の席に移ってくれ」
「え、あ、はい!」


黒髪が外にカールした女の子が私のために席を移動してくれたので私は彼女にお礼を言った。


「いえいえ!」


元気良く言ってくれたけれど彼女の顔が少し引きつっていて私は疑問に思った。


「よろしくな!名字!俺、円堂守!」
「よろしくね!円堂くん!」


HRが終わった後、私はクラスの子に囲まれた。どこから来たの?、趣味は?、とか、いろいろな質問に受け答えた。中には好きなタイプは?とかいうくだらない質問もあって、それは適当にはぐらかした。


「ねぇ、名字さん!テニス部に入らない?」


その輪の中の一人にそう言われて私はとても困った。部活に入る予定なんか無かったし、と思ったいたらまたソフトボール部は?バスケ部は?と立て続けにお誘いがあって私は困り果てた。そうしていると、隣の円堂くんに話し掛けに来たのか、男の子がやってきた。彼は白に近い髪色でそれを立たせた髪型だった。私は彼を見た瞬間からお世辞抜きでかっこいいと思ってしまった。胸がどきどきして落ち着かないので私はそちらから目を反らしまた皆の話に耳を傾ける事にした。


「名字!!」


いきなり円堂くんが私の名前を叫んで思いもよらぬ事を言った。


「サッカー部のマネージャーやらないか!?」


そう言った円堂くんの目は光輝いていて、そして私には今朝の借りがあったので断るに断れない。私が答えに渋っていると、円堂くんが私の肩を叩いた。


「じゃあ放課後グラウンドに来いよ!」


その直後チャイムが鳴り先生が入って来たので答える余地も無かった。隣を見ると円堂くんが満面の笑みで笑い掛けて来た。私は苦笑いを返すしかなかった。その後の授業中はずっとあのかっこいい彼の事で頭がいっぱいだった。私は授業が終わったら円堂くんに彼の名前を訊く事に決めた。








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