初仕事だよ!
イレブン集合!




放課後、マネージャーとしての仕事が始まった。初めて任された私の仕事はドリンク作りだった。部室でみんなのボトルにアクエリアスの粉を入れて水で溶かして氷を投入、そしてしっかり蓋を閉める。うん、全く問題無し!やればできる子だ私!


「名字先輩!出来ました?」
「うん!完璧!」
「お疲れ様です!運ぶの手伝いますよ!」
「ありがとう!」


春奈ちゃんの手を借りて二人で校庭までベンチにボトルを運んだ。専用のプラスチックの大きな四角いケースの両端を二人で同時にベンチに下ろすとたぷん、と音がした。結構重かったな。「ありがとう春奈ちゃん」「いえいえ!」これは一人だと辛いものがあると思った。
春奈ちゃんは目金くんからビデオカメラを奪っ……譲り受けて撮影を始めた。多分みんなの技の出来具合とか客観的に見なきゃわからない癖とかを確認するためなんだろう。
みんなの練習風景を眺めているとビリビリと伝わってくる何かを感じる。それくらいみんなは頑張ってるという事だ。
鋭いスライディングで宍戸くんからボールをかっ攫う土門くん。そのボールを背後から狙う影野くん。みんなに指示を出す鬼道くんはなにやら不敵な笑みをしている。半田に渡ろうとしていたボールを松野くんが途中でサッと奪い去る。なにやってんだ半田。松野くんがドリブルしてゴールの前まで運び染岡くんにパスしようとしたけれど栗松くんと壁山くんがブロックしてボールは少林寺くんへ。それから風丸くんにパスすると一気にゴール前にいた豪炎寺くんまでうんと長いパスが届いた。そして豪炎寺くんのファイアトルネード!円堂くんのゴッドハンドを破ってボールはゴールの中!「わあぁ」思わず声が洩れた自分に自分でも驚いた。

練習が一段落するとみんなの休憩タイムが始まった。豪炎寺くんが額の汗を拭う姿を、かっこいいなぁ、思いながらと眺めていると秋ちゃんと春奈ちゃんがタオルとドリンクを配っていて、こうしてベンチに座ってただ見ているだけの私が恥ずかしくなった。秋ちゃんが円堂くんにちゃんと渡せているのを見て安心しながら、春奈ちゃんが豪炎寺くんに渡しているのを見ると「先越された!」勝手にと思っていた。明日頑張ろ。ちょっと落胆し、ふと隣の夏未ちゃんを見ると真剣に夏未ちゃんは何かの書類に目を通していた。夏未ちゃんの横顔に見惚れていると視線が尋常ではなかったようで夏未ちゃんが私の方に顔を向けた。見てるのバレちゃった!


「ご、ごめんね!」
「何か用かしら?」
「えっ……い、いやぁ、あはははナンデモナイヨー」
「そう。変な子ね」


夏未ちゃんはクスリと笑った。やっぱり綺麗な子だ。「な、夏未ちゃん?」私がなんで笑われたんだろと聞き返すと夏未ちゃんは今度は目をハッと見開いてびっくりしたような顔をした。


「夏未ちゃん、か……」
「あっ、ごめん。馴れ馴れしかったよね」
「ううん。いいわよ、そう呼んで」
「あ、ありがとう!」


仲良くなれたかもしれない。そう思えるだけで私は嬉しかった。ここの、雷門のみんなはみんなみんな優しいな。「お仕事邪魔しちゃってごめんね」「いいえ」優しく微笑む夏未ちゃんは正に美少女、いや美少女を通り越して女神だった。それから、その女神様こと夏未ちゃんは私にたくさんの事を教えてくれた。

雷門はフットボールフロンティアという全国大会に挑戦していてこの前のセンバヤマ中に勝利し次は準決勝だという事。
そのセンバヤマ中との試合で鬼道くんが雷門の仲間になった事……。

雷門って、強いんだな。準決勝って、結構すごいと思う。それに鬼道くんって元々雷門にいたわけじゃないんだ。今度聞く機会があったら詳しく聞いてみようかな。


「早く仕事に慣れるといいわね」
「あっ、うん!私頑張るよ!!」


夏未ちゃんは女神のような微笑みをして「期待してるわよ」と言った。もっとやる気になった。そんな時、「このドリンク濃っ!!」という声が聞こえてきたものだから、私は萎びた茄子みたいにへこたれた気分になった。


「みんな、ごめんね……」
「あなたが作ったのね」
「はい……」
「こんな事、よくある事よ。気に病む事はないわ」
「ありがとう……!夏未ちゃん……!」


雷門には、仏様が二人いるみたいだ。美しい仏様と、とびきりかっこいい仏様。







prev top next






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -