シャッフル! | ナノ




平穏が訪れた。

「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよー」
「おはよう」

もう机は何も汚れても傷ついてもいない。中にもなにも入っていない。
舐め回すような視線も小声もなにもない。
もうしないと泣いたあの生徒たちを、晴日は受け容れて許した。
だから、あの生徒たちも晴日を受け容れた。
仲の良かったあの子たちとは今でも仲がいいし、別のグループのことだって挨拶は交わすようになった。クラス全体がなかよくなった。晴日に気があったらしい男子生徒が誰だったのか、最早覚えているものはいない。
・・・・・ ・・・・
グループが、崩壊した。

そして、平穏が訪れた―――

ただそれだけの日々。
これはただそれだけの――カノジョの栄光と堕落の話。

「じゃあ、受験校は箱庭学園に決めるのね?」
「はい。特にやりたいことが見つからないので、幅の広い学校に行きたいんです」
「とても、いい選択だと思うわ。だって、最近元気そうな顔をしてるもの。みんな言ってるわよ。あなたは優しいって」
担任はにこやかにそういうと、進路指導用の紙に何やら書き込んでいる。やっと一仕事終わったのだ。目に見えてうれしそうだった。
「だって、この数え切れない数ある生命の中から人間として生まれて、更に数百カ国ある国の中の日本に生まれて、更に同じ中学に通って同じ学年で同じクラスに通うくらい近しい人のことなんですから、分かりますよ」
「そう――。いや、全く、予想以上だよ」

とてもとても嬉しそうに――――――それは嗤った。

「………」
「君はいつも―――いや、一度も、僕の名前を呼んではくれないね」
「………名乗っていない人は、呼べません」
「おや?名前なんてちっぽけなもので区別するほど遠い存在だったかな?君が言ったんじゃないか」
「………………」
「貴方はワタシで私はアナタ。
なら、
・・・・・・・・
僕は君で君は僕だ」

僕―――安心院なじみは微笑んだ。


それだけの、春日晴日の栄光と堕落の話。

一京のスキルを持つ悪平等な人外と、受け容れるだけの一介の異常の邂逅の話。

彼と彼女と人外の選択


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title by カカリア様

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