シャッフル! | ナノ




数瞬黙り込んだ晴日に、長者原は顔の熱が上がっていくのを自覚した。我ながらとんでもないことを言ったものだ。と。
頭をよぎったのはにやついた小さな友達の顔やら、その友達が大事にする学校の校則やら、世間一般で語られる常識やらモラルやら、沖縄にいくそもそもの原因を作った男の掲げたぶっ飛んだマニフェストやらそれはそれは実に様々で同じようなものだった。

「い、いえ、業務を分担していただいている事へのほんのお礼といいますか、それほど滞在はできませんが、やはり景色は綺麗でしょうし、春日さまは別行動していただいてかまいませんし、費用は理事会持ちですので、」

自分でもみっともないと思うような長ったらしい言い訳がぺらぺらと口をついた。

「いいよ。プールもいいけどやっぱり海が見たいなあ」

が、当の本人は何でもないように当たり前に申し出を受け容れた。
やっぱり自分の名前は大切にしなくちゃいけないよね、とそう言って。

「選管のみんなも一緒でしょ?だったら私も手伝って早くアナタたちの仕事を終わらせなくちゃ。長者原くんも多少は気分転換しなくちゃいけないもんね。選挙のことばっかりだと息詰まっちゃうし。うん、いいんじゃないかな、沖縄」
「……そう、でございますね。忌憚なきご意見、心より感謝を申し上げます。目的を果たしたら多少は自由時間を設けさせていただきます。確かに気分転換も必要ですね」
「うん。約束だよ。せっかくの夏休みなんだから、帰ってきたら一緒にこのプールでも遊ぼうよ」
「…わかりました」

悲しいかな、学園の危機に気分転換も何もないだろうと突っ込むような奴はいなかった。
反対側を泳いでいる種子島には会話など聞こえないからだ。

「それはそうとそろそろあがられては?血色があまり優れないようですし…」
「うわっ。爪紫色だ!」

差し出された手をおずおずと握って晴日はプールから上がった。
そして去っていく2人を見て、ああやっと平穏が訪れたな。なんて種子島は安堵した。しかしその平穏も二日で終わりを告げ、これからはこのプールで2人の異常に出迎えられるようになるのである。

揺蕩う甘さに溺れたい

(そういえば授業出てないけど長者原くん水着ってあるの?)
(…買っては、います)
(未使用のまま卒業しなくてよかったね)



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title by カカリアさま

選管の皆さんがいったのはハブ捕獲に終身する弾丸沖縄旅行なのか、それともそれなりに観光を楽しむ一泊二日とかの旅行なのか。非常に気になります。

そして初めはデートの話でも書こうかと思ってたんですが、それより先に健全に旅行を終えました。
自分でかいといて何ですが順序ぶっ飛んでる辺り異常なのかな、と思うこのごろです。

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