お店…ってすまいるのことよね?え?佐々木…さん?
頭が混乱している最中だが、そんなことはお構いなしにみんなが畳みかけてきた。
「素敵な人だったじゃない」
「どんな男アルか!」
「ど、どんなって…」
「顔とかよ!銀さんならふわふわした頭に死んだ魚のような目とか」
「銀ちゃんはふわふわした頭ってか、頭の中がふわふわしてるネ」
すごい食いつかれた!!
生肉を貪るピラニア並みに離してくれなさそうだ。
「え…っと。髪の毛はこう…流してて、眼鏡で…身長は高い、かな」
「ほう。特技とかはあるのか。頭がいいとか腕が立つとか」
「え?えーっと…。りょ、両方です…」
「すごいじゃない。お給料はいくらくらいなのかしら」
「…その辺は全く想像できませんが、でも、お家は一流の名家…みたいですよ」
「すごいアルな!万年金欠でいろんな意味で頭パーの銀ちゃんとは大違いネ。性格は?」
「……冷徹。血も涙もないね。…でも、決めたことは一途で…、負けず嫌いで、どっか子供っぽくて、……寂しがりなのかな」
…なんか、改めて私って佐々木さんをこう見てたんだなー…みたいな、ね。
すごい恥ずかしい。
「それで、智香さんはその人のことどう思ってるの?」
「…よく…わかんない…です」
またこの手の質問か。
分からんもんは分からん。
味方ではないにしろ…敵…といえるほど敵対してないし…友達…というほど仲良くもないし。
「やたらポイントの溜まったマスドのカード持ってたり、メール弁慶だったり、人のこと見透かしたような発言するくせに、自分のことも良く分かってないみたいで、冷徹かと思えば優しくしたり、敵かと思えばそうでもなくて……」
「……」
言ってからどっと羞恥が押し寄せた。いや、分かんないけども!!
でも、改めて口に出すと恥ずかしいわァ!!
と、その時、突如ケータイが鳴りひびいた。
「なによ〜もしかしてそのカレから〜?」
なんてさっちゃんの冷やかしを半ば聞き流しながらケータイを開いた。
…屯所からだ。
私は席を外して電話をとる。
「はい、もしもし」
『た、助けてください宝生さんんん!!』
「!?」
内容は、沖田くんが置き去りにした神山が暴れているだの何だのという実にくだらないものだったが、電話口の声からは必死さが滲んでおり、こりゃほっとけないな、と思わせるには十分だった。
「…あーもー、今から行くから!とにかく落ち着きな!」
ブチッ、と乱暴に電話を切って、「悪いね。ちょっと職場でトラブルがおきてるみたいで、行ってきます!埋め合わせはまた今度するんで!」と叫んでブーツを履く。
何だってこんな時に!そう思いながらも私は屯所に駆けだした。