知らないふり

朝、玄関の前を通ると手紙がぽとりと一通落ちていた。

こんな時間に手紙がある事に驚きつつだれ宛かと手紙を手に取った。


【サレー州 リトルウインジング
 プリペッド通り四番地

 リチェッタ・ダーズリー様】


…私宛か。

ここで開けようかと思って封筒に手をかけるが、
ドアの前で立ち止まって見るのもどうかと思い部屋へと一度戻った。




部屋へと戻り、どこから来た手紙かを確かめる為に裏を見る。


「…ホグワーツ魔法魔術学校?なんだこれは」


悪戯か?そう思いながら手紙を開こうとしたが、少し考え込む。

怪しいモノは開かない方が良い。

母さんに言うか?いや、こんな怪しい手紙を親に言ってもただ心配されるだけだ。

昔言った事も信じて貰えなかった。

なので机のカギつきの引き出しにそっと入れる。


これを見なかった事で何か起きなければ良いが…まあ、ただの悪戯だろう。


そう思っていたのが甘かった。

次の日、階段を下るとまた同じ手紙が落ちていた。

今度は違う郵便物に混ざって入っていたのだ。

家族に気付かれないように私はその手紙を抜き取った。

手紙は毎日、同じ時間に家に配達されてきた。

同じ時間という事が分かった時から私は毎日その時間に手紙を取りに行く事にし、一ヶ月程粘り、夏休みになった。

夏休みになって直ぐだったからか、気が緩んだのだろう。

私は久しぶりに寝坊した。

目が覚め、時計を見てみると手紙が来る時間を五分程過ぎていた。

一瞬呆然としたが、慌てて起き上がり玄関に急ぐ。

もうポスティングされている時間だ。

運が良ければ誰も取りに行っていない筈…最近ずっと私が取りに行っているから私を待っている可能性もある筈だ。

近所迷惑にならない程の騒音を出しながら玄関に急いで向かった。


…手紙が、ない。


もう既に母さんと父さんの手元にあるかもな…溜め息を吐きながらリビングを見た。

リビングの方を見るとキッチンのドアの前でべったりと床に張り付いてるハリー・ポッターと、ドアノブに耳をくっ付けているダドリーが居た。

若干引きながら二人へ近付く。

ドアへ近付くとダドリーが手招きして来たので早足で音を立てないようにしながら近付いた。

ダドリーが声を出さずに私を呼ぶなんて珍しい事なので中で何かやっているのだろう。

ダドリーに近付くと、ジェスチャーと口ぱくで扉に耳を近づけろと言われた。

素直に従い、耳をぺたっとドアにつける。

中々に聞こえ辛いが、途切れ途切れの言葉が聞こえた。

たぶん手紙の事を話している筈だ…一ヶ月間、毎日一通ずつちゃんときていたのだから。

手紙の事を考え、少し憂鬱になる。

あんな手紙がきたら心配するに決まっている。

もし手紙の事を聞かれたら知らないとても言おうか。

親だから気付くかも知れないけれど、その時はその時だ。

うまく騙せれば心配は減るかも知れない。

聞かれた時の返事を考えながら二人の会話を聞き取っていた。

聞いていて気付いたのだが、私の事ではなく、ハリー・ポッターの事を話しているようだ。

何故私の事を話さないのだろうか…もしかして手紙はきていないのか?

暫くの間聞いていたが、途中から私が必要としている情報はあまりない事に気付いたので、ドアから体を離し、自室へ戻ろうとした。


「部屋に戻る」


自室に戻ろうとしたらダドリーとハリー・ポッターが驚いて私の方を見てきたので一言付け加えた。

それから足音を立てないようにしながら自室に戻った。



 

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