誕生日

プリペット通り四番地に少女は住んでいた。

少女の名前はリチェッタ・ダーズリー

彼女の物語は、これから忙しくなっていく。


今日は私の誕生日だ。

けれど、誕生日だったの方が良いかも知れない。

もう直ぐ誕生日だったになるからだ。

今日はなんとも面白おかしい誕生日だった。

兄が爬虫類館でニシキヘビが入っていたケースに落ちたのだ。

毎年ダルイ誕生日のお出掛けだったのに、イトコが、ハリー・ポッターが面白くしてくれた。

まあ、アイツは自分がやったとは気付いてないようだったけど。

クツクツとその事を思い返しながら、ひとしきり笑った後にそろそろ寝ようかと思い立ち上がる。

立ち上がって直ぐにコツコツとガラスを叩く音が聞こえた。

その音に疑問符を浮かべながら窓の方を向いた。

窓を見ると一羽のフクロウが其処に居た。


「フクロウ?なんでこんな住宅街に…」


住宅街に居る、という事に疑問符を浮かべながら窓に近付く。

ずっと窓を突付き続けているのは何故だろう、無用心だと思ったが窓を開けた。

窓を開けて手すりに乗っているフクロウを見る。

…足に何か縛り付けてある。

それに思わず手を伸ばした。

少し手を伸ばした所でフクロウは足を突き出してきた。

取れ、という事なのだろうか。
よく分からなかったが、紐を解いてフクロウの足に縛り付けてあったモノを取った。

紙に何か包まれているようで、怪しいと思いながら開くとそれはカギだった。


「カギ?」


金色のカギで、少し色が濁っている。

何でこんなモノが…紙を見てみれば分かるかも知れない。

そう思いカギを包んでいた紙を見てみると薄らと細かく文字が書いてあるのが見えた。


【未来の私へ。
あなたはお金の事で必ず困る。
だから私はあなたへカギを渡す。
私を知りたいのなら望めば良い。
物語は思った通りにしか進まない。
あなたは問える筈。だってあなたは私だから。
この紙とカギは捨ててはいけない。いつも持ち歩いて欲しい。
ノーヒントはいけないから私はあなたにヒントを遺すわ…私の名は  】


手紙の最後に書いてある筈の名前は異国の文字で分からなかった。


「なんだこのよく分からない手紙は…」


思わず頭を抱える。

そもそもフクロウが届けてきたという所で可笑しいのだ。

溜め息を吐きながらまだそこに居るフクロウを見る。


「お前は知っているのか?このよくわからない手紙の事を」


答えてくれる訳がないと分かっていながらも誰かに問いたくて独り言のようにフクロウに質問した。


『俺は義務をまっとうしただけだ。テメエこそ知らねえのか?』


ホーっとフクロウが鳴いたと同時に男の声が聞こえた。

その事に驚いて後ろを振り返る。


「誰か…居るのか?」


『俺とテメエ以外には寝てる奴しかいねえぞ』


ホーとまたフクロウが鳴いたと同時に声が聞こえる。

まさかとは思いつつ、フクロウに聞く。


「お前が喋ってた。なんて事はないよな?」


『ずっと俺は喋ってたじゃねえか。テメエは馬鹿か?』


フクロウが口を開いた途端言葉が出てきた。

驚いて目を見開きながらも冷静になろうと心を落ち着かせようとする。


「生物学的にありなのか…?」


『俺が人間の言葉を喋ってるんじゃねえよ、テメエが俺等の言葉を喋ってんだ。テメエの方が生物学的には変だぜ?』


「…私が喋っているのか?」


『テメエは質問ばっかりだな…そうだって言ってんだろ』


はっきりそうだと言われ、自問自答する。

今までの人生で鳥と喋った事などないような気がする。

自分の記憶を手繰り寄せようとするが、特に何も思い出せなかった。


『無意識に話してるだけじゃねえのか?』


「そうなのかも知れない…だがお前が喋ってるのではないか?」


『いや、俺人間の言葉少ししか認識できねえから』


フクロウの言葉を聞き、少し溜め息を吐く。

私が溜め息を吐くとフクロウの方からも溜め息が聞こえたような気がした。

少しの間無言の時が流れると、バサッと羽を広げる音が聞こえた。


『俺はもう行くからな。テメエとはもう会う事もねえと思うけどよ』


「ん?ああ、そうか」


どうやらフクロウが羽を広げた音だったらしい、行き成りの音に吃驚して微妙な反応になってしまった。

さっさと出て行こうとしたように見えたフクロウは動きを止め、くるりと頭だけをこちらに向けた。


『おい、俺等と喋れる事は人に言うなよ。面倒な事になるぜ』


と言ってさっさと飛んでいってしまった。

飛んでいくフクロウの姿を見送り、呟いた。


「…どうせこの変な力がばれたら結果は同じだ」


家族に嫌われたくないなんて願いは、叶う事なんてないってわかってる。






 

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