ままごとみたい


先程見かけたコインはお金だったようで、彼女達の金庫を見せてもらった時に説明をしてもらった。

見た事もない通貨だからかも知れないが、小さい頃ダドリーとしたおままごとを思い出した。お金というよりも、ただのおもちゃに見える。

見た事もない誰かが、私に相続したという金庫に入ってみると、アスカ達の金庫と中身が違っていて少し驚いた。

…本ばかりだ。金庫の中だというのに、しっかりと本棚がある。

お金もあるいといったらあるのだろうが、通貨の単位がわからない私の目ではいくらあるのかがわからなかった。

本を引き抜いて、パラパラと捲ってみる。

内容を見ても、よくわからなかった。本の表紙には、【コロッとイッちゃう魔法薬】と書いてある。作者の気が知れない。タイトルのセンスはどうなっているんだ。


「ちょっとガッカリだね。この本も私たちにはまだ難しいし」


「…いいえ、ダーズリーさんやアスカちゃんにちょうど良いレベルの本もあるみたいですよ」


この本は難しいのか。魔法使い達の基準がわからない。よくわからないまま本棚に戻すと、女性に本を手渡された。


「かなり古い時代の本ですけれど…今のダーズリーさんが勉強するならこの本が一番です」


そう気が引けたように言った女性に渡された本を、とりあえずバックに入れておいた。

盗んだ訳ではない、借りただけだ。

金庫の本当の持ち主に、心の中で呟いた。返しに来れるかは、わからないけれど。



私の住んでいる町の最寄り駅。

行くためには切符が必要なのだが、女性はどうも切符の値段がわからないらしい。


「えっと………日本の電車なら分かるんですけど…イギリスのものは難しいですね…」


何故日本のものはわかるのにイギリスのは分からないんだ。

そう思いながら、お金をもらって切符を買った。

切符を買えないのが普通なのだろうか、大男も、切符が買えなかった。

電車に乗り込んで、ぽつぽつと会話を楽しんだ。

最寄駅に近づくにつれ、緊張してくる私を、和ませようとしているのだろう。気遣いが、少しだけ嬉しかった。

数時間一緒に居て、聞けなかった女性の名前を聞くと、トオルという名前らしい。

大男がはじめに呼んだ名前と同じだった。



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