白と黒の髪



おかしな格好をした、大人に囲まれて、眉間にシワを寄せた。


「ポッターさん!お会いできて光栄です!!」


みんなして、ハリー・ポッターに群がってくる様子を見て、ハリー・ポッターに繋がれていた手を振り払って逃げる。

…なんだこれは。

大人に囲まれているハリー・ポッターを見ながら、何が起こっているのかが全く理解できなかった。

私の知っているハリー・ポッターはそんなに周りに尊敬されるような事はしていない。やるのは、ダドリーにやられた仕返しくらいだ。

そんなに目立つような存在でもない。まぁ、クラスの女子にはそこそこ人気があったようだが…その所為で周りの男子に嫌われていたのは言うべき事ではないだろう。

周りの大人が落ち着いてきた頃に、少し離れた所にいる女の子と、視線があった気がした。

ふいっと自然に顔をそらされて、気のせいかと思っていたが、白髪の女性の手を引いてこちらに向かってきたところで気のせいではないと気付いた。

女性に気付いたのか、大男が嬉しそうな声を出す。


「おお、トオル!…ん?そこの子は」


「私の娘よ。それで…その女の子かしら?」


「ああ。そうだ」


ぐいっと肩を掴まれて、女性の前に押し出される。

何のようなのか全く分からないが、私を見て小さく微笑んだ女性には好感が持てた。

白髪というよりも、銀色の髪色なのだろうか。目の色を含め、ウサギのような色だ。


「おまえさん、気をつけるんだぞ。トオルは怒ると案外怖いんじゃ」


軽く…叩いたつもりなんだろうが、地面に押しつけられるように肩を叩かれた。



女性と少し会話したあとに、店の奥の方へと大男とハリー・ポッターは進んでいった。

…どうやら、私はこれからこの女性と、女の子と共に行動するらしい。

ぬっと出された手を反射で思わず握る。


「はじめまして!私アスカっていうの。あなたは?」


「…リチェッタ・ダーズリー」


明るく声をかけてきたアスカとは正反対の声色で返事をして、ほんの少しアスカを見た。

黄色人の血がまじっているのだろうか。普段目にしない肌の色に、ほんの少し目を見張る。

女性も同じような肌の色をしている。髪の毛の色は正反対なのに、何だか不思議な人達だ。


「行こう!」


どこにだ。

いきなり手をつかまれ、私を引きずるように歩きだすアスカに眉間のシワを濃くした。


「私たちは、どこに行くんだ…?」


「ダイアゴン横丁だよ。ホグワーツの教科書とか買いに行くんでしょ?」


「ホグワー…ちょっと待って」


「はい…なんですか?」


なんとなく…家族の近くにいるのが、怖くて、ハリー・ポッターについてきたが、ここに来たのはこういった理由だったのか。

気付いていなかった自分に、頭を抱えそうになった。今気付いた事を、言葉にしなくてはいけない。

頭の中はごちゃごちゃだが、口を開いた。


「私は、親にホグワーツに入学…の事を相談していなくて、ハリー・ポッターたちについてきたが、家族に声をかけたりしていない。
…少し家出のような感じになっている。あとお金も持っていない」


「…それは、難しい問題ですね」


「私は進学する学校も決まっている。だから、たぶんこのままで行くと教科書やら何やらを買っても金の無駄遣いにしかならない」


「…そう、ですね。それでは、先にご両親に会いに行きましょうか?お話をつけた方がよいはずですから」


ご両親に会いに行きましょうか?そうゆっくり言い聞かせるように優しく微笑んだ女性を見ながら、胃の中がすぼまるような気がした。

口の中が、なんだか渇く。今までは緊張などは全くせずに喋っていたのに、両親という単語が出た途端に口が動きづらくなった。


「けれど、その…私の家族は異物が嫌いなんだ。私も、嫌われ…て、しまっているかも知れないから…取り次いでくれないかも知れない」


「大丈夫ですよ。私がなんとかします」


震えるように呟いた私の声に反するように、堂々と喋った女性に、目を見開く。

どういう意味のなんとかする。なのかはわからないが、安心できる強さの声だった。


「ごめんなさいアスカちゃん。今からダーズリーさんのお家に行ってきますけれど、どうしますか?」


「い、行く!」


「わかりました。では…その前に、お金を下ろしませんか?実は電車に乗れるほどお金を持っていないんですよ」


今から行く。

そう思っていたから、ホッと息を吐いた。



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