うっとうしい
いつ寝たのか。全く覚えていなかった。
ふと、おいしそうな匂いで目が覚めたからだ。
まぶたを押し上げると、ハリー・ポッターが大男にソーセージを渡されているところだった。
…体が重い。
けれど起き上がらなくては。そう思ってゆっくりと起き上がる。
「起きたのか。嬢ちゃんも食べるか?」
「…悪いが、遠慮しておく。食欲がない」
私に気付いた男が、私にソーセージを向けるが、食べる気は起きなかった。
そう、だ。
こいつはダドリーに不思議な。私と同じような力を使って嫌な事をしたんだ。
昨日の夜。この大男が小屋に入って着てからした事。私がした事を思い出して、少し吐き気が出た。
気持ち悪い。
大男の声色は少しだけ、私に気をつかっているような気がした。
「おれたちゃ今から入学用品を買いにへ行く。おまえさんも行くか?どうせココにいたって、どうしようもないだろう」
「…あの、リチェッタ。大丈夫?」
心配げな声色を出すハリー・ポッターに言葉を返さずに荷物をまとめる。
私には、何をどうすればいいのかわからなくて、けれど断る理由もなかったので無言で荷物をまとめた。
旅行用鞄を持ち上げ、二人に引き続いて小屋を出る。
私は何度もちらちら奥の部屋のドアを見たが、家族がこちらをのぞくような行動は全く見られなかった。
それに悲しくなりつつ、昨日の嵐で水浸しになっている一艘しかない船に乗る。
周りを見る余裕すらできない。
そんな私は急に動き出した船に体を仰け反らせた。
どうやら船は勝手に岸へ向かっているらしい。
船が岸に着き、二人は船から降りてさっさと進んでしまっている。
気をつかったような視線を感じたが、私は船から降りた後に船へ手をペタリとつけた。
「私の家族を迎えに行ってくれ」
そう言ったあとに、トンと船から手をひいた。
スイスイと船は小屋の方へと向かっていく。
あの、海のど真ん中へ家族が取り残されてしまうのは嫌だった。
小屋に向かった船を見たあとに、進んでいた二人をゆっくりと追いかけた。
私の歩く速度が遅いのか、途中からハリー・ポッターに手を引かれながら歩いた。
「ねえ、リチェッタ…電車の切符、この値段で大丈夫かな…」
「…値段が少なければ、あとで清算すれば良いだろう。わからなければ駅員に聞けば良い」
握られていた手が離れた。ああ、ここは駅なのか。
質問に答えたあとに思った。
周りを見なさすぎた。そう思って、あたりを見渡すが、特に何かに関心を抱くことなく小さく息を吐く。
ハリー・ポッターにまた手を引かれ、ただただボーっとしながら歩く。
普段ならば嫌だと思うのに、嫌だと思う事すら面倒になる。
心配げに何度も私の顔を見るハリー・ポッターが、少しだけうっとうしかった。
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