フラグは折れますか。



「ち…ち、うえ…?」


「苦しまぬように一発にする。少しだから我慢せよ」


揺るがぬ声色に、ついていけていなかった脳が、ヤバイと判断する。

今、動かなければ、

死ぬ。


「ぅ、わぁ!!」


父上が振りかざした槍を、ごろりと転がって避ける。チリと、頬から血が出た。

避けた先に転がっていた槍を拾って、飛び起きる。

急に起き上がった所為と、先程腹を強く打たれた所為で気持ちが悪い。吐きそうです。

でも、そんな事は言ってられない。

カタカタと震える手を押さえて、槍をしっかり持つ。顔を上げて父上をしっかりと瞳に映した。


「犬千代!来い!」


「ッ!!」


大きな声で言われ、足が動く。動きながらも槍に振り回されぬように、地に足をつける。

こわいこわいこわい!死にたくない!!

戦場に居る訳でもないのに、その単語を頭の中で繰り返す。

槍の方から、あたたかい空気を感じた。

私の事を守ってくれているような温度に、少しだけ安心して父上に向けて槍を振った。


「せぁぁあ!!」


「っぬ!」


自分のできる限りの力を使って振るった槍も、父上に簡単に弾かれて終わった。

こわい。私は殺されてしまうのでしょうか。

まだまだ痛む腹をおさえながら、父上を見る。

無表情じゃ、ない…?

「やはり婆裟羅者であったな」


にやりと笑った顔は、悪戯をしたあとの子供のようだった。

その表情を見て、どっと力が抜ける。


「殺されると…思いました」


「殺す気であった。だがお主は槍をとった…この意味はわかっておろう?」


にやりとした表情から、真剣な表情にかわる。

槍をとった。私は…戦場に向かう、ということを自然と選択してしまった。

戦場になんて行きたくない。けれど、死にたくない。


「………は、い」


「逃げだそうなど思うな。逃げ出したら、今度こそ某がお主を殺す」


「…はい」


「犬千代、稽古をつけてやる。槍を持て。死にたくなければ強くなるのだ」


父上に言われるがままに槍を握りなおす。

槍は、なぜだかあたたかかった。


「…槍の鍛練をする前に、まず婆裟羅の修行だな」


「ぇ?父上、私は婆裟羅など使えませんよ?」


「では、槍の先から出ている炎はどう説明するのだ」


呆れたような声を出す父上の目線にそって、槍の先を見る。

火が、出てる…?


「うわっ!?」


「馬鹿者!手をはなすでないわ!」


……また、ぼや騒ぎを起こしてしまいました。

父上は案外慌て者らしく、今度は家臣の方ではなく私が消しました。

父上…なぜ、風の婆裟羅者なんですか…まつ様と同じ状況になりましたよ…。

とりあえず、自分の出した火を消す事を覚えました…。


あぁ、私って婆裟羅者だったんですね…ははは…利家さんフラグ折れるでしょうか…。



  

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