お前も墓参りに来るのだな、




線香を供え、立花へ経を唱える。

生きている立花死んでいる立花
もうよくわからなくなってきてしまった。あいつはまた随分と髪が伸びる。まるで何年も時が経っているようだ。
否、経っているのだろう。

立花が入れ替わる。

その事に気づいてから時が流れるのが緩やかになった。
悲しくなるくらいに遅いこの世は恨めしい。
気付いたのは俺だけなのだろうか。
皆気付いているが知らないふりをしているのかも知れない。
暇つぶしに筋トレやバイトなどをしても、金がたまるだけで特に何も起きなかった。
成績は上がったが、この世界は緩やかに動いている。
就職をしても無意味だと言う事に気づいたので、俺はひたすらに自分を鍛えようと筋トレを続けた。
フリーの忍者になってもいいのではないだろうか。
生きていることさえよくわからなくなってきた日常の中で助けになるのは、入れ替わる立花を見届ける事だった。
時と場合によるが、立花は半年から一年に一度入れ替わる。
人の死を計算道具に使うのは如何なものかと思うが、ぷちりと糸が千切れるように、季節が戻るのだ。
だから俺は立花に線香と経を。
今までに見つけた立花の遺体があるところ全て覚えている。
定期的に線香を置きに行くのだ。
非道か?否。忘れ去られた立花を覚えているのは俺だけだ。悲しい運命をたどった奴に線香をやりに行くだけのこと。非道というよりも善なる行為である。
だがしかし、これは予想していなかった。

お前も墓参りに来るのだな、立花

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