言葉に色をつける特殊技能(鉢屋三郎)



学園からのおつかいの帰り道に出会った後輩と言葉を交わしながら供に歩く。

面倒だからと先に帰ろうと思ったが、後輩と一言交わして直ぐにその考えを改めた。

普段気にしていなかった二学年下の綾瀬は、才能のある後輩だった。

優しい声色で、次々と不快ではない早さで出てくる言葉にひんやりと汗が出てくる。

ここまでの才能がある奴を何故知らなかったのだろう。

順忍と音声忍の才能を併せ持っている少年と供に歩くことなど初めてのことだった。


「鉢屋先輩?」


「ん?どうかしたか?」


「いいえ、ぼんやりとしておられましたから」


どうしたのか、と。

答えても答えなくても、どちらでも構わないと暗に告げる口調に思った事をするりと言いそうになる。

開きかけた口を閉じて、「いいや、なんでも」と返事を返した。


「そうですか。ああ、そういえばこの間不破先輩が仰られていました」


「雷蔵が?」


「はい。聞きますか?」


柔らかく笑って問いかける言葉にこくりと頷くと、綾瀬はにんまりと笑った。


『キミと話すと口をすべらせそうになるよ』


「…!?」


「物真似です。似ていたようでよかった。鉢屋先輩も、そう思われたのですよね?」


「…さぁ、どうだかね」


「ありがとうございます」


訂正、才能のある。ではなく、才能を磨いている、だ。

末恐ろしい後輩に、ひくりと頬をあげた。


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