尾浜



「おひゃーそんなに食ったらふとるふとる。でぶちんになるでよ。家畜になるでよ!」


「別にいいの!俺は食べる事が好きなんだから!お前も食べなよ」


「おひゃひゃ、ありがとありがと!気持ちだけでもありがたや〜って奴でよ!」


おかしな笑い方をする友人に、勘右衛門はつられて笑った。

墓の前で一人笑う勘右衛門を咎める人は誰もいない。そういうものだ、墓参りは。


「死後の世界ってどう?」


「おっひゃーきいちゃうきいちゃう?けど駄目でよー言っちゃったら勘右衛門もこっちきちまうでよ!」


「うわぁ、それはちょっと勘弁だ!」


「おひゃひゃ、つーか勘右衛門結構危ない危ない。おいらの所に頻繁に遊びにきちゃ駄目でよー引きづられてるでよ!」


「え、まじ?」


「まじまじ」


団子をかじっていた手を止めた。

おかしな笑い方をやめた友人をジッとみると、友人はニヨっと笑った。


「勘右衛門がきてくれるのは嬉しい嬉しい。けどよーもう会いにきちゃだめでよ。おいらも安心して逝けないでよ」


「でも、俺はお前に会いたいよ」


「おひゃー嬉しいでよ!でもおいらとこんなに話せるってことは、勘右衛門かなりやばいやばい。おいら悲しいでよ」


「お前は俺がそっちに行くと悲しいわけ?一緒になれるのに」


「今じゃなくってもいつかくるくる。生き物は死ぬのが当たり前でよー焦らなくってもいつか死ぬでよ!だから長生きするべきべき」


くるくる勘右衛門の前でまわって、鼻歌を歌い出す。

その鼻歌の懐かしさに、勘右衛門は切なくなった。毎日きいてたのになぁ。

切なさをごまかすように、団子を口に含む。


「おっひゃひゃ!勘右衛門でぶちんになるでよーそんな悲しそうにしないしない。勘右衛門が死んだら真っ先に迎えにくるくるー約束でよ!」


「約束やぶらない?」


「おひゃひゃひゃひゃ!どーだろどーだろ。勘右衛門が長生きしたら守るでよーでも来るなとか言ったけど盆には来てほしいほしい」


帰れ帰れと忙しなく動く友人に、笑って立ち上がる。

手土産にもってきた団子は全て食べた。


「またね」


「おひゃひゃ、しばらくこないこない!きたら駄目でよーまたまたまたでよ!またまた来世!」


ちょっと歩いて後ろを振り返ると、友人はもういない。

またって三回も言った。もう会えないのかぁ。でも来世で会えるんだね。


「死んだあともなんだか楽しそうだ」



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