俺は学級委員長



俺の学年のい組とろ組は、とても仲が悪い。

俺達は組はその様子を見ていつも戸惑っていておろおろしていた。

は組の俺達は全員仲が良く、い組やろ組とも仲が良かった。

けど、俺達を取りあって二つの組が喧嘩し合ったり、そもそも組の中で仲が悪いから酷い状態だ。

そんな状態でもなんとかギリギリやっていたけれど、実習の時、そのギリギリ…綱渡りの状態が駄目になってしまった。


連係が必要な授業だった。


いろは、一人ずつ。三人になってやる実習だった。

まだ俺達は二年生に上がったばかりで低学年だから、ただの野宿をするという訓練で、一年の時の復習で危険ではなかったはずだった。

い組とろ組の顔をうかがいながら俺達は組はとても疲れていた。

気を使うのはとても疲れる。なのに二人は喧嘩ばっかりしていて大声を出しまくって、他のチームとも大声を出すから合流してしまってめちゃくちゃだ。


「これは俺達が怒られるのだろうか」

「ああ、疲れたなぁ」

「ちょっとねとく?」

「いや、でも寝るのも危険じゃないか?」

「じゃあ交代でねよーよぉ」

「そうしようぜ!じゃあ俺一番に寝るわ!」

「人数多いし半分寝て良いですよ」

「わかったぜぃ。おらも寝る」

「わたくしは起きております」


ほのぼのとは組同士で喋っていた。

もう先生達に怒られる覚悟を決めていたのでもうどうしようもないと諦めていた。

取っ組み合いの喧嘩をしているい組とろ組をしり目に、俺達は交代で睡眠を取って万全の体制。

二組はボロボロだ。

あーあ。と呆れながら、夜が明けるな。

そう思った時だった。


軽い音が聞こえてきた。

複数の軽い音。


「犬?」


生物委員のクラスメイトが呟いた。

いや、犬がこの山にいるなんて聞いた事がない。

いるって聞いた事があるのは、


「ッ!狼だ!」


大きな声で叫んだ。

視線が俺に向かって集中する事に一瞬ひるむが、それ所じゃない!

こんな足音が聞こえるってことはもうすぐそこにいるんだ!

今日の実習は一年生の時に何度もやったものだ。だから先生は近くになんていない!


「みんな急いで学園に戻れッ!すぐそこに狼がいる!」


俺の言葉にハッとして動き出すけれど、い組とろ組は動かない。

その事にイラッとして


「早くしろッ!死にたいのか!?今の時期だと狼はハラペコだぞ!!」


ろ組の生物委員の竹谷がいち早く動いた。

生物委員だからだろう、それが野生でも動物の状態なんて知っているはずだ。

けれど動きが遅い。そりゃそうだ。だって今まで殴り合っていたから。


「みんなッ!あいつらを連れて逃げるぞ!」


立ち上がれすらしない奴を思いっきり背負って走り出す。

暴れる元気すらねぇとは本当に馬鹿だ!

俺の行動に即発されたのか、みんな一斉に走り出す。

人間の足に狼はすぐ追いつくだろう。危ない。

このまま走っているだけだと襲われてしまう。

弱ってる奴等ばっかりだ。どうする、どうすればいいんだ!?

不安そうに見てくるクラスメイトの視線に答えないといけない。

だって俺は学級委員長。

指令を出すのは俺の係だ。


…狼は木の上まではのぼってこない、はずだ。


「おい、みんなッ!こいつら上にあげっぞ!」


「了解いたしました!」


真っ先に返事をしてくれたのは体育委員所属のクラスメイト。

穏やかで優しくて良い奴。体力もある。

俺の背から、ぐったりとして気絶している…久々知だったか。を受け取ってサクサクと木の上にのぼって行った。


「のぼれる奴は自分でのぼれッ!」


「私、学園まで走って先生よんでくっからぁ!!」

「おらも行くぅ!」


ハッとした表情をして走って行ったのはうちのクラスで足が速い奴二人。

一人は生物委員、もう一人は火薬委員だ。

生物委員がいるから狼が通らない場所とかもわかっているだろう。わかんないけどかけるしかない!

残ったクラスメイトでぐずる奴らを木の上にあげていく。


「早くあがってよぉー」


「なんで私がお前らは組の言う事を聞かなければならないんだ!」


「早く上に行け!そうしねぇと俺らは組があがれねッ!?あっ」


「早く上がれ鉢屋!もう居るんだ!!」


一番最後までぐずっていた鉢屋が現れた狼に怯えてするするのぼっていく。

それを見て少しほっとするけれど、俺達は組が上がれそうな…というより、俺達は組は全員下に降りていて木の上は満杯だ。


「ッああああ!!いあああ」


「お、おちついてぇええ!!」


既に友人達は襲われ始めている。俺はまだだけれど、もう来るだろう。
けど、


「逃げるなんて出来るわけないじゃないかッ!!俺達友達だろ!?」


友達を置いて逃げるなんてできる訳ないだろう!?

懐に入れていた苦内を取り出して、俺は無謀にも狼に向かって行った。

友達を置いて逃げれる訳ないッ!それに、今更逃げても後ろから襲われるだけだッ!

襲われている友人の方へ駆け寄って、苦内を狼へ振りかざした。

そこで俺の記憶は途切れた。


学園へ応援を呼びに行ったは組二人は狼に襲われながらも学園につき、けれども狂犬病で死亡
木の元にいたは組は全員死亡。
むしゃむしゃ食われている姿を、い組とろ組は静かに眺めていたそうな。

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