3 なんで、どうして、止めて。
「綾瀬ー!雷蔵見なかったか?」
「あっちだよ、竹谷」
にこっと笑って、雷蔵の居そうな場所を指さす。
どこにいたって大体わかります。だって双子ですもの。
それがわかっているのか、まわりの奴らは雷蔵の場所をおれに聞いてくる。
「あ、三郎の場所も知ってるか?」
「たぶん、今は用具委員の所じゃないの?」
ついでに鉢屋の場所もきいてくる。
鉢屋の場所なんて聞かれたって、わかるわけないじゃないの。
そうおもうけれど、大体当たってしまうのがなんとも言えない。
あらあら、おれは別に鉢屋の事は好きじゃないのにね。
「ありがとな!」
「どういたしまして」
爽やかな笑顔でい組の教室を出て行った竹谷を見送って、貼りつけた笑顔を落っことした。
疲れる。
途端に無表情になるおれに、みんなは俺がろ組の奴らの事が好きなんだろうなって思っているらしいけど、おれがろ組で好きなのは雷蔵だけだよ。
い組の方が好きだ。だって、おれ五年い組だもの。
あらあら、なんで雷蔵と違うのかしら?
と思うかも知れないけど、やっぱり同じ顔が三人も居たら気持ち悪いでしょう?そういう事なのだと思うのよね。
けど、双子でずーっと一緒だったおれの気持ちわかる?
なんでだろう、どうしてだろう、なんでおれの代わりに、おれがいるの?
隣の組でもい組は他のクラスとあまり仲がよかった訳ではなかったから、会えないばっかり。
雷蔵の隣にいるのはおれとおなじ、おれ?
雷蔵は、おれのこといらないのかな。なんて思っちゃうのはしょうがないのさ。
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