2 りゆう?だって、君のため。
あらあら、あらら。
実家に呼ばれてきてみれば、あらあらそうですか。
雷蔵を呼びたかったのね。わかりましたよはいはい。
でも雷蔵は実習で一月はもどってこないから、おれは帰ったフリをして雷蔵のまねっこをするよ。
雷蔵として言われた言葉は、あとで伝えれば問題ないモノね。
実家の用事を済ませて、学園に戻るための道を歩く。
迷ったりはいたしません。だっておれはおれだもの。
そんなおれに、不思議に思ったのかなんなのか。
いや、ただの迷子かな。
「あ、不破先輩!」
「やあ神崎。今日も迷子かな」
「迷子になっているつもりはありませんでしたが、迷子です!」
元気よく声をかけてきた神崎に爽やかにあいさつした。
「どこに行くの?」
「はい!金楽寺です!」
「じゃあ、一緒に行こうか。僕は今用事が済んだ所だからね」
にこっと笑って、手を繋いで、振り回されながら歩くこの行動は嫌いじゃない。
金楽寺へ神崎の用事を済ませて、忍術学園までもう少しといった所で、神崎はくちをぱっかり開いて不思議そうに首を傾げた。
あらあら。いつもよりぱっかり開いておりますの。
「不破先輩は、今日は何かあったのですか?」
「なんのことかな」
「不破綾瀬先輩なのに、不破雷蔵先輩のフリをしてるのは珍しいと思いました!」
「あらあら、あらら?気付いてたの?これはこれはしくじった」
「はい!勘です!」
「元気がよいねぇ」
でもそれは元気よく言わない方が良いと思うよ。
そう思いつつ、雷蔵じゃないとあててもらえたことが少し嬉しい。
あらあら、あてられるなんてよくないのにね。しかも気をつかって人が少なくなったところで聞いてくる。街中で言われるのは嫌だけれど、いい子だいい子。
「それで、何の用事だったのですか?」
「あらあら、聞いちゃうのかな。まぁいいけれど。実家に呼ばれて行ったら、雷蔵に来て欲しかったそうなのだよ。全く酷い話さ」
「先輩方そっくりですからね」
「鉢屋と雷蔵の方が似ているよ?」
「そうですか?僕には綾瀬先輩と雷蔵先輩の方が似てると感じますけど」
「ありがとね」
にこっと笑って、神崎の髪の毛を掴む。
「あがっ」
「あらら、神崎そっちじゃないよ」
そっくりと言ってもらえたし、この事は雷蔵には黙っていようかな。
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