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「こんにちは、天女様」
忍たまに囲まれている彼女に向かって声をかけた。
ザッと守るように壁を作る忍たまに、この子たち駄目ねぇ…と思いつつ笑みを作る。
忍たまは表情を険しくした。あぁ、これは私以外忍たまに近づけないはずね。好きな人に睨まれたらイヤだもの。
「別に取って食いやしないわ」
「くのたまが何の用だ」
「天女様がお困りの用件でお話があるの。あなたたちそんなにデリケートな事を聞くの?最低ね」
あくまで表情を崩さずに冷えた声で喋ると、忍たまは押し黙った。
でも、彼女だって女だもの。天女ってくらいだし。ここに来たのが三週間前。そろそろでしょう。
それに気付いたのか、挙動不審になって止まった忍たまの間をすり抜けて、天女の手を掴んで歩き去る。
戸惑っている彼女の手は私達…いいえ、農民や町人の手でもないわ。いくらなんでも柔らかすぎる。
「あなただれ?」
「あら、ごめんなさい。私はくの一教室の、綾瀬といいますの」
「わたしは夢花です!えっと、私が困ってる事ってなにかなぁ?」
私より若干低い身長を利用して、上目使いで私の事を見てくる。
表情もうまく作っているようね。けれど、それが女にも通用しないという所に気付いていない所が惜しいわ。
瞳が隠せていない。私への不信感。男から隔離された事の不満。いけない子ねぇ…。
「昨日くの一教室で月のモノの話題になりまして…天女様も女性でいらっしゃいましょう?血の臭いはしないけれど、そろそろだと心配になってしまったの」
「え…!?」
「周りの話を聞くと、天女様は異なる文化の場所からいらっしゃったって…処理の仕方、わかりますか?」
「か、考えたことなかったぁ…!!」
ひっそりと周りに聞こえないよう耳元で囁く。
ええ、しっかり私の後をつけてきているのが数人いらっしゃるのよ。
視界にうつらない場所で、気配が駄々漏れ。消す事くらいいたしなさいな。
「慣れない環境で遅れる事もあるかも知れませんが、知っていた方がよいと思うの」
「う、うん!!教えて欲しいなッ」
さっきまであった不信感や不満が嘘のように消えて、私の着物を掴む。
あらあなた、おいくつです?私より年上でしょう。そんな子供のような行動をしては、はしたないわ。
気持ちは冷めるけれど、それを出さずににこりと笑う。
「ここでは男共がたくさん居てよろしくないわ。くの一教室に行きましょう?」
「…え?」
「ここだと色々居て…まぁここでもいいなら私は構いませんけれど」
懐から手裏剣を取り出して、木に向かって投げつける。
避けた者が数人。避けられなかった者も数人。
まぁ、どっちにしろ表に出たら駄目よねぇ。
「ここでも構いませんか?」
「くの一教室でお願いします!!」
「あらそう?あぁ…私の手裏剣回収して返してちょうだいな。人の話を聞くのはとても失礼だもの。それくらいするわよね?」
イラッとしたのか、私に向かって手裏剣を投げつけようとしていたのに釘を指す。
「別に私に向かって投げてもクナイで弾くから問題はないけれど、天女様にあたったらどうするのかしら?弾く方向までは計算しないわよ」
「なにそれ怖いッ!」
ひぇっと声を出して私の後ろに天女様が隠れた。
私を盾にするとは酷い人。まぁそういうものよね。
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