逃げないで 話を聞いて



「綾瀬、せんぱい、ま…って!」


怪士丸に相談して、落ち着いて…やっぱりぼくは綾瀬が大好きだって気付いた。

それを言わなきゃって思って、綾瀬はぼくの声色で何を言っているかわかるから、綾瀬がぼくに嫌われているかと思っちゃってるかも知れないって思った。

綾瀬の瞳を見たときには、こわいっておもった。

けど、今は全然…こわくない。

会わなきゃ。会わなきゃ会わなきゃ…!!

そう思って毎日追いかける。

けど、綾瀬は逃げるのがうまくって、僕は綾瀬の瞳を覗くことができない。

後ろ姿も見えなくなって、息を吐くけど、日陰で休んだりしない。

ゆうれいごっこも止めて、体力をつけて、日向に長くいるとふらふらするけれど、綾瀬にあわなきゃいけないから…だからがんばる。

先輩の情報によると…綾瀬は足は速いけれど、あんまり体力ないみたいだから、たぶんどこかで、休んで…る。はず。

日にあたった所為でふらつくからだに、少しイライラするけれど、そんなのは無視して…歩きだす。


今日は暑い


だから、池の近くにいるかも知れないと思ったら、綾瀬は本当に池に居た。

…池…逃がさないようにするには、やっぱり落っことすしかない。よね。

そーっと、そーっと

音を出さないように歩いて、綾瀬の真後ろに立つ。

こんなに…近くにきたの久しぶりだ。

嬉しいな。


「綾瀬…ごめんね」


「!?」


とんっと軽く背中を蹴って、水しぶきとともに綾瀬は池の中に落ちて行った。

それに合わせてぼくも、池の中に入る。綾瀬は水中から出てこない。

ちゃぷんと、もぐってみると、綾瀬がぼくの事を真っ直ぐ見ているのが見えた。

視線を合わせて見ると、カッチリ合う。


…そっかぁ。よかった。


ぼくと視線があった事にびっくりしたのか、慌てて池から出て行こうとする綾瀬を追いかける。

ずるずると、地面に這い上がろうとしている所を袴を掴んで留めた。

びくりと身体を震わせて、ぼくを見る綾瀬は、逃げる事を諦めたみたいだった。


「綾瀬…だいすきだよ」


「な、んだよ…」


「ぼく学園から出ていかない…綾瀬と一緒に穴熊する」


「あぶないだろ。駄目だ」


「だいじょうぶ…ぼく、綾瀬を守れるくらい強くなるの」


険しい表情をして、駄目だというけど、○は嬉しそうに瞳で笑っていた。


207β様より、お題お借りしました。

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