狡い人
下坂部平太
俺の、大事な大事な幼馴染。
俺は家が忍の家系だから、忍術学園に入った。
平太は、家は普通の商人で、俺の両親みたいに穴熊ではなくって、なのに俺を追いかけて忍になるなんて言って忍術学園にきた。
忍になんか、なって欲しくない。
忍術学園には、俺の事が好きだから入ってきたんだろう。
だったら、俺の事が嫌いになったら平太は忍術学園を辞めるはずだ。
早く辞めろ。辞めてしまえ。
ついてきてくれて、嬉しい。一緒に居てくれるなんて嬉しい。
けど、忍術学園は危ない。危険だ。
こないだ実習の授業で上級生の誰かが死んだって聞いた。
平太も死んでしまうかも知れない。一般の出なのに、それは悲しい事だ。
辞めてしまえ、俺を追いかけるな。
俺は平太が大事なんだ。
俺は今迷いに迷っているから。心の中がぐちゃぐちゃで、平太が大好きだと言ってくれた瞳はまっくろけっけ。
でも、そんな状態で、平太と瞳を合わせて、平太が迷っているのを声色で知れたから。
一瞬だけでも瞳が合った偶然に少し感謝するべきかも知れない。
長い間視線が合っていたら、嬉しくなってしまう。楽しくなってしまう。
そんなの駄目だ。
早く平太は学校をやめるべきだ。早くしないと、一般人に戻れなくなってしまうかも知れない。
俺の事を追いかけないで。俺の瞳を見ないで。大好きなんだって知って欲しくない。
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