どうしてちゃんと見てくれないの
ぼくと綾瀬は、一歳しかちがわない。
家も隣同士で、ぼくはいっつも綾瀬と遊んでいた。
綾瀬の笑顔はとってもかっこよくって、ぼくは綾瀬にひっぱってもらって歩くのが好きだった。
一年先に忍術学園に入った綾瀬を追いかけて、お父さんとお母さんに相談して、説得して、忍術学園に入れてもらった。
なのに、学園に入ったら綾瀬はぼくを見てくれない。
なんで、なんでなんで…?
ぼく…何もしてないのに。綾瀬は笑ってくれないし、いつも冷たい声を出してくる。
さみしくなって、つらくなって、こわくなって
綾瀬の顔をみるのがこわくて、顔を見れなかった。
けど、勇気を出してみたんだ…だって、追いついたんだもの。
体力もついて、ついでにみんなと罠をしかけたから、そこに綾瀬を追いこんで。
「…綾瀬、せんぱい」
「なんだ」
「なんで…ぼくの目を見てくれないんですか…?」
落とし穴に落ちた綾瀬を上から見下ろして、綾瀬の事だから…真っ直ぐにギッと睨まれると思っていたのに。
綾瀬は視線をそらして、冷たい声を出すだけ。
どうして、どうして?
ぼくはいつも顔をそらしていたから気付けなかったけど、何か綾瀬はぼくに隠していたいことがあるの…?
綾瀬の瞳はとても綺麗で、なんでも語ってくれて、
「下坂部、退け。穴から出れないだろ」
「ぁ…ごめんなさい」
ぼくに声をかけるため、綾瀬は一瞬だけ顔をあげた。
その時に一瞬だけ合った瞳は、濁っていて、あれ、あれ…?
どういうことですか。ぼくの知ってる綾瀬の瞳はどこにいったの?
ぜんぜん、なんにもわからない。
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