お
隣にいたから手を繋いで、隣じゃなくなったから手をはなした。
それは相談して決めたことで、合意したことで、離れた位置から見ていて辛そうで、手を伸ばすか迷った私は決めたことを破ろうとする悪い子なのかしら。
いいえ、悪くないわ。ずぅっと迷っていたけれど、やっぱり私は手を伸ばそう。
しゃがみこんで、ふだんは人に見せない表情をさらけ出しているのを見て、私も隣にしゃがみこんだ。
強がっても根は弱い子だものね。
「もんちゃん。お隣いーい?」
「あぁ」
返事をした潮江文次郎は、会計委員会委員長だとは思えないくらいちっちゃかった。
寂しがり屋さんだもの、お友達がみんなとられて寂しいのだと見ただけでわかった。
それを強がってまわりに見せないからこうなるのに。男の子ってめんどくさい。
「もんちゃん、もう一緒の位置にはなれないけど、手を繋ごう。もんちゃんが嫌になったら離していいから」
ちいさな頃に伸ばした手と違って、今は私の手の方が小さい。
そんな私の手にのっけられた手は大きくなったけれど、やっぱりちっちゃかった。
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