タイプをおしえて2

 
予想通りさっき落ちてた蛸壷にはいなかったが、その蛸壷の三つ先の落とし穴に落ちていた。

他にも罠を発動させた形跡がある。先輩達が頑張って張ったのに、かかったのが一年とは報われない。結構エグイぞこの罠。


「おい、鶴町」


「綾瀬せんぱぁい」


「媚びるな」


「もう来てくれないかと思いました」


「来ないつもりだった」


そこまで深くもない落とし穴に落ちている鶴町に手を伸ばす。

降りるスペースもないし、上から引き上げる方が簡単だ。


「さっさと掴まれ。助けてやらんぞ」


「はい」


ぎゅっと強く握った事を確認して引っ張り上げた。

いつも以上にドロドロと汚れている鶴町を見て眉間にシワを寄せた。


「綾瀬せん、ぱい」


「なんだ」


「怪我しました。痛いです」


「自分で治せ。保健委員はお前だ」


「心配してくれたっていいじゃないですかー」


拾ってこいと善法寺先輩に言われたので、普段ならポイ捨てしておく所を抱っこする。

横に抱える?俵抱き?んな事出来る訳ねーだろ。体重考えてみろ。重すぎて俺が死ぬわ。

まだ二年なんだからそんなに重たいモノ持てねぇよ。

首に巻き付く腕をうぜぇと一言返して放置する。別に邪魔にならなければ問題ない。


「今日、何で来てくれたんですか。一回放置したじゃないですか」


「善法寺先輩が拾って来いって言ったからだ」


「うっそだぁ…綾瀬先輩のツンデレ」


「そういうのは三朗次に言え。俺は言われても嬉しくない」


「前もそう言ってましたよね」


「そうかもな」


俺の肩に顎を乗せて機嫌よく鼻歌を歌いだした鶴町に、乗せてもらうだけのお前は楽だろうな。と悪態を心の中で呟く。

ふと、善法寺先輩に話しあって来いと言われたのを思い出した。鶴町が重すぎて忘れていた。もっと痩せろ。


「おい、鶴町」


「なんですかぁ」


「俺に毒とか色々仕掛けるの止めろ。うぜぇ」


「それは、左近先輩に当たるからですか」


「左近はどーでもいいが、万が一俺に当たったら嫌だ」


「…先輩が自己紹介してくれたら止めます」


「まだそんな事いうのか。めんどくせー奴だな」


表情が見えないが、いつも断る時にしているぷくぅと頬を膨らませた表情をしているのだろう。

想像できてしまう所が長く付きまとわれている証拠かも知れない。けど、流石にもう付きまとわれるのは、主に左近が疲れてしまったので自己紹介くらいならしてやろう。


「唐木田綾瀬だ。他に何か言う事はねーだろ」


「好きなタイプは?」


「んなこと聞いてどうすんだ」


「好きなタイプは?」


「…俺に対して迷惑じゃねー奴」


急に黙ってしまった鶴町に、意味がわからん。と見切りをつけて、善法寺先輩に鶴町を引き渡した。

次の日から嫌がらせのように飛んできた手裏剣やら何やらがメッキリなくなったので、今度からめんどいので何かあったら直に言おうと思う。


あとがき
撒き散らし型不運。撒き散らすだけなので自分に被害がない所が特徴。被害は主に左近に行く。
むしろ主人公的には強運なつもり。



 

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