つまらない
「そこに居るんだろう」
天井裏に向かって伊作が声をかけた。
気付かれているとわかっていたので、特に何も言う事はなく板をはずして下に降りる。
伊作は薬を煎じている最中だ。相変わらずこの部屋は薬臭い。
「ねぇ、伊作」
「なんだい」
ゴリゴリと薬草を潰している伊作によりかかった。
伊作から、うわっと声がしたけれど気にしない。
男なのだし、伊作は顔こそなよっちいが六年の忍たまだ。問題ない。
「急にどうしたの。キミらしくないじゃないか」
「別にいいじゃない。少し構いなさいよ」
「僕は薬を煎じないといけないんですーどっかのだれかさんが作った薬は強力でね」
「イヤミ?」
「もちろん」
作業を中断せずに喋る伊作は、つまらない。
なぜピンピンしてるのよ、あんたに毒を盛ろうとしたのに…まぁ、シナ先生に褒められたから許す。
「しっかしまぁ、あんたも不運なのか幸運なのかわからないわよね」
「僕としては今日は幸運な部類かな。毒にはひっかからなかったし」
「あんたの代わりに六年全滅で、しかも薬が切れて夜中に作業じゃない。それを幸運と言えと?いくら忍のゴールデンタイムといえど、不運だわ 」
「心配してくれるの?」
「はぁ?そんなわけないじゃない」
「じゃあ何のためにココに?急にきて、だらだらするだけなんてことはないよね」
「べつに。ただ、あんたが作るならコレはいらないわよね」
「ありがとう、もらっておくよ。予備が欲しかったんだ」
私が懐から出した薬をサッと奪い取ってにこりと笑った。
なによ、あんた疑うって事をしなさいよ。
そう思うけれど、出した薬は本物で、それに伊作は薬を見分けられる。
あぁ、つまらないわ
「つまらないなら、僕と薬でも煎じない?」
「そこまで楽しいものではないじゃない」
「つまらなくはないよ、とっても有益!どうせ一週間くらいはくのたまの実習授業で怪我人が増えるんだ。薬は無駄にならないさ」
「ふぅん、そう」
苦笑いを浮かべながら、また草をすりつぶす作業をする伊作を見る。
私に手伝えとか言って、やったらやったで怒るくせに。
伊作が罠にかかればいいのに、ほんと、何で私の嘘は見分けられるのかしら。
修行がたりないと思いもう六年目。
私は未だに伊作を罠にかける事に成功していない。
ほんと、つまらない。
あとがき
主人公が絡むと不運じゃなくなる伊作。主人公は撒き散らし方幸運。ただし一人に限る。
伊作の不運を弾き飛ばして周りの人を不運にするスペックを持つ。
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