絶叫しても事態は変らない。



なに、なに、なに!?


掃除をしていたら急に男の子に抱えあげられて私は風のようになった。

…え、え?え?

もしかして、とうとう私殺されちゃうの?

なんで、どうして?私、今日は失敗してないよね?

通常状態で半泣きの私は、今日は二割増くらいで泣きそうな顔をしているはずだ。


「いけいけどんどーん!!」


「ひぃっ……」


揺れるようで揺れないような、揺れないようで揺れるような動きをしながら私は運ばれていく。

この男の子の顔は見た事がある。確か体育委員の子だ。

名前は覚えていないけれど、毎日出門表にサインをして出て行ってくれる。ただし大雑把に。

きちんとした字で書いて行ってくれるのは、綺麗な男の子だけだ。綺麗な男の子の顔は子供の頃に見た覚えはあったが、名前は覚えていない。

この子は殆ど毎日外に出て行くから、私の殺害場所は外なのだろう。裏山、裏々山?それとも、裏々々山?

誰か助けて欲しい。私はまだ死にたくない。

そう思っても、誰に言っても助けてくれる人はいないし、私は仕事のできないタダ飯食らい。オプション天女(仮)

こんな変な女が助けを求めても誰も助けてくれないだろう。むしろ助ける人は頭がおかしい。

この上下に揺られて無理矢理運ばれる感じ、一度経験している。

これは私が忍術学園に天女と勝手に思いこまれて連れてこられた時だ。その時も確かこの子が私を運んだ。

拾った子が捨てるのか。なるほど、理にかなっている。ような気もする。けど死にたくない。

でも、そうだ。私が捨てられるにしても、殺されるにしても仕事はちゃんとしておかないと死んだあとにまた殺されるかも知れない。

恐怖と恐怖の中、口をひらく。


「あ、の…もし、外に出るならサインを…」


「ん?今日は外には出ないぞ!!」


まさかの学園内での殺害ですか!!!

むしろあれなの。放送規制されるような事をされてポイ捨てされちゃうの!?

やっぱり色の授業とかで使ったあとに殺されるのね、こわい。

死ぬならせめて、綺麗な死に方をしたい。

想像してしまったら恐怖しかないもので、ガタガタと体が震えだした。

腐女子の想像力をなめないで下さい。悪いものは究極に悪い方向にとてつもなくリアリーに想像できます。

急ブレーキをかけるように、彼は止まった。

こどもだっこをされていた私は、胃が思いっきり彼の肩に当たって「うっ…」と低い声を出した。

中身を出しては行けない。出したらたぶん、私が想像してるのよりも酷い殺され方をすることだろう。こわい。


「おっとすまん!大丈夫か!?」


「は…い」


安心させてから、いたぶって殺すのか!!


そういう手法なのね。こわい。

恐怖により、震え、動悸、息切れ、吐き気、顔色はたぶん最悪な状態の私を見て、彼はとても驚いた表情をした。


「わ、わるい!!」


私が悪い?あ、そうですよね。私が悪いのはわかってます。生きてて申し訳ないくらいです。

でもまだ死にたくないの。


「ご、ごめんなさい…」


とりあえず謝っておけば寿命がのびる気がした。

こんな状態で寿命をのばす方法がわかったら、本当にその人は頭がいいと思う。

頭が悪い私には苦し紛れの言葉しか出てこない。


「食堂のおばちゃんが、手伝いが欲しいと言ってきたんだ!だから天女様を連れてきたけど、体調悪そ」


「い、行きます。大丈夫です」


「そうか!」


体調悪そうだからやめとくか。なんて、死亡フラグだ。

今、食堂に行かないと私死ぬのね。彼が助け舟をかけてくれ…た訳ではない。たぶん。

殺そうと思ったのに、うっかり口を滑らせてしまったんだ。たぶん。

こわい。こわすぎる。

目の前には食堂の勝手口。ここで彼の腕の中から脱出しなければ私は死ぬ。


「お、おろしていただけませんか…?」


「ああ!」


ああ!?


ひぃぃ!!やっぱり私は殺される!?

この無邪気な笑顔の裏では私は惨殺されているんだ。

簡単に降ろされるのは、あれなのね。追いかけて殺すのね。快楽殺人なのね。

こわい。こわすぎる。でもここで死ぬのに気付いた顔をしたら、私は本当に死ぬ気がする。ごまかせばどうにかなる。かも。でも相手は忍者だから、どうにかならなそう。

でもモノは試しで、やってみないで死ぬのも何だか嫌だ。


「え、えっと…送ってくださりありがとうございます…」


「礼を言われるような事はしてないぞ!天女様は顔色が悪いが、本当に大丈夫か?」


「だ、大丈夫です。お気になさらないで下さい。そ、それでは」


「そんなに急がなくてもおばちゃんは怒らな…行ってしまった」


急ブレーキの所為でやられた胃がめちゃくちゃ痛いけれど、ぺこりとオジキをして猛ダッシュで勝手口から食堂に入る。

し、死亡フラグ回避できた…かな…!!

こわい。こわすぎる。

食堂のおばちゃんは一般人だから、私の事は殺さないはずだ。挨拶をして、仕込みの手伝いをして、終了したら涙が流れた。

まだ生きてる!!!生きてるってすばらしい。今日は本当に死ぬかと思った。

私はか弱いってほどでもないけれど、胃の痛みがハンパない。まだ急ブレーキの跡がのこってる。たぶん、あざになるだろう。

だって吐きそうだったもの。むしろ口まで出た。でもあざになるってことは生きてるって事だよね。まだ私生きてる。

事務の仕事をしなくては。ああ、ほんと…今日は事務の仕事が殆どない日でよかった。

ふだん通りだったら、私は事務の先生に殺されていることだろう。今からでも仕事が終えられる。

罠にかからなければの話だから、微妙な所だけれど、終わらないと私の人生はジ・エンド

涙はおさまったけれど、やっぱり今日も半泣きで掃除をする。仕事が終えられるといっても、普段の倍速でやらないと終わらないのだ。



 

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