あいしてあいしてあいすれば
急に転んだようにぽろんと現れたその人を見て、私は天女が現れたと確信した。
いや、その人というよりも、その人の肩に乗っている白い大蛇を見て。と言ったところだろう。
「ここ、どこぉ?」
頼りなく呟いたあとに泣きだした私よりちょっと年上の天女に、守らなくては罰が当たる!
と慌てて忍術学園まで連れ帰った。
先生や色んな人にとっても怒られたが私は気にしないぞ!
私がまいってしまったら、天女に味方はいなくなってしまうではないか!
怒られたあとに、真剣に学園長に頼み込んで、天女様を事務員にしてもらった。
別段美しい訳でもない、普通の女を置くなんて…色の授業にも使えない。と誰かが言ったような気がしたが無視だ。
見た目は普通だが、性根はとても美しいに違いない。そうでなければ、あの白蛇は天女にくっついていないだろう。
羽衣は布だと思っていたが、実際は蛇だったようだ。一度絵で見たことがあったが、描いた人間が蛇と布を見間違えたに違いない!
七松小平太は、悪いモノは見えないが、良いモノは見える瞳を持っていた。
例えば友人二人居て、片方が物の怪に憑かれ、もう片方が神様に愛されていたとする。
物の怪に憑かれている方の友人は普通の何事もない人間に見えるが、神様に愛されている友人はとても輝いているのだ。
ぴかぴかきらきら
とても美しい。
たとえ、神様に愛されている友人が神様の供物になるから輝いているのだとしても、それはとても美しい事なのだった。
村で友人が苦しそうな表情を浮かべながらも、神様に愛されている様子を見て羨ましく思ったし、代わりに愛されたいとも思った。
何故そんな表情をしているのかはわからなかったけれど、愛されている人を愛せばその愛がまわってくるというのは知っていた。
だから村人は友人をあいしてあいしてあいしてあいしてあいして、山の神様にあげたのだ。
だから、この天女をあいしてあいしてあいしてあいして
あいして、何をすれば良いのか正直よくわからんが、とりあえず愛して大事にして、守ってあげれば学園にも良いことが起こる…はず!
どうやら仕事は覚えさせればどうにかやるようだし、このまま行けば天女様もこの地でやっていけるだろう。
この地に何時までいるかわからないが(この天女は迷子のようだし)帰れなかった時の事を考えても天女に学を教えておいて問題ない。
学園で何か問題が起こったとしても、あの白蛇に愛されている天女は私が引きとれば問題ないだろう!
毎日毎日地上に落とされて嘆いている天女は悲しそうな表情をしているけれど、私が愛す!あんなにぴかぴかきらきらしているんだ!
あいしてあいしてあいしてあいしてあいしてあいしたら、何か良いモノ帰ってくるはずだ!
けれど、私はまだ弱いから愛す前提の守るができない。
だから今日も修行だ!鍛練だ!いけいけどんどーん!!
あとがき
体育委員会の生徒が小平太に引きづりまわされているのは主人公の所為ではないと言い張ります。
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