誰ですか、貴方。1
死んだ。
私ここで死ぬんだ。
そう思いながらボロ泣きしたら、いつのまにか知らない子に担がれて、職業さえも担ぎ上げられて、安全なようで全く安全じゃない場所に放り込まれた。
こわい。こわいよぉ。
なんで私、知らないあいだに天女様なんて呼ばれてるの?
料理なんてできないし、字も書けない。
こんな無能をなんでこんな場所に置いてるの?
あれなの。夢小説とかでよくある、色の授業に使われてポイ捨てされちゃう人間に私はなっちゃうの?
こわい。
とりあえず、愛想は女子以外に振り撒かないようにしよう。
事務員になれって、なればこの学園で衣食住を確保してくれるって言ってたけど、私は満足に仕事ができる人間じゃない。
学園は人間を育てるって言ってたけど、私に字を教えてここに留まらせて何をしたいの?
全力で答えないと殺されちゃう気がして、頑張って平仮名だけでも書けるようになった。
漢字は時間をかければ読める。去年は選択で古文の授業を取ってたの。
事務のおばちゃんにちょこちょこ仕事を教えてもらって、事務のおばちゃんとくのたま以外とはなるべく関わらないようにして、でも外の仕事はちゃんとする。
ずっと半泣きだ。
ふとした瞬間に涙は出てくる。
大体は、うっかり罠にかかってしまった時だ。
今日は穴に落ちた。
おかしい。最近、事務のおばちゃんに足元の罠の見分け方を教えてもらったのに、なんでひっかかるの?隠していなかったからうっかり落ちてしまったじゃない。
こないだ落ちた穴とは全然違う穴だ。深くて細い。
綺麗に掘ってあって、周りに指を引っかける場所がなかった。
つるつると指が滑る。
深いと言っても、2メートルくらい。ジャンプしても、ギリギリ指が外に届かない。
ぼろぼろ涙がこぼれてくる。
最近は泣くのになれてしまった。前は泣く時には声を出さないと泣けなかったけれど、今は声も出ず静かに泣く。
助けを呼ぼうか。そう考えてみたけれど、私を助けても見返りはない。
とんだモノ好きくらいしか助けないだろう。
だって、私怪しまれてるもの。
この穴の中で死んでしまっても、あ、死んでる。埋めよう。くらいしか思われないはずだわ。
天女とかたまぁに言われてるけど、私は本当に価値がない。
いっそこのままここで死んでしまった方が、まわりの人のためになるんじゃないだろうか。
だって、あれだもの。
私タダ飯食らいだもの。お給料なんてもらえないくらいにしか働けないわ。別に私がいなくっても仕事はまわるのよ。
イヤな考えしか頭の中を廻らない。本当に私って駄目な奴。
「…ホウキ、折れてないといいなぁ」
私が落っこちた時に、うっかり手放してしまったホウキが穴の近くにあるだろう。
私は本当に価値がないのに、私よりも周りの人の役に立てるホウキが折れてしまっていたら居たたまれない。
「折れてないですよ」
「へ?」
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