夢オチは却下致します。3



「あてはないのか?」


「七松さんが、私を天女というのならば…ココに私のあては一つもありません」


「じゃあ、伊代にあてはあるのか?」


「あれ、私の名前知ってたんですね。ずっと呼んでくれなかったから、覚える気がないんだと思っていました」


天女様、なんてあだ名を言うのはもう、七松くんだけだった。

みんな普通に私の苗字や名前を呼んでくれる。

けど、最初に私を天女だと言いだした七松くんは何を言っても無視して天女と呼ぶから名前で呼ばれると変な感じがして少し笑えた。


「あてはないですよ。伊代にもないです」


「そうか!だったら家にこないか?」


「は?」


「私の家で住み込みでバイトしないか?金は払えないけど、寝床と食事は提供するぞ!」


「えーと、ありがたいお話ですが、その」


「今返事が欲しい!家族にだって今から連絡しないと間に合わないからな」


頭がぼんやりしていて考えられないし、直ぐに返事なんて出来ない。

そもそも、私は女性で、七松くんは男性だ。思春期の男子の家に泊まりに行く女性ってどうよ。とんだ阿婆擦れじゃないの。


「七松くん、おうちで変な噂たてられちゃいますよ。そういう事はもっと考えなければ駄目です。お嫁さんこなくなっちゃいますよー」


「伊代がくればいいじゃないか」


「あはは、冗談言わないでくださいよー。私なんか平平凡凡の天女でもない普通の女ですから」


「冗談じゃないぞ!」


大丈夫か七松くん。頭湧いたのかしら。

七松くんは私に頭の心配をされたのに感づいたのか、思いっきり眉間にシワを寄せている。

これはヤバイかも知れない。久々に命の危機かも知れないなぁ。とぼんやり危機感なく思う。

さっき諦めたから、正直この世界で死のうが何しようが何をされようが、もうどうだっていいのだ。ただ苦しいのと怖いのは嫌だな。というだけで。

一瞬でここまで図太くなれる自分自身に、我ながら呆れる。でも図太くなれるくらいの時間をココで過ごしてしまった。


「お嫁さんとか、そういうのは本当の人にしか言っちゃ駄目なんですからね。軽口でも駄目ですよ」


「軽口じゃなかったらいいんだな?」


「はい?」


「学園を卒業するまで一年ある。私が卒業して、就職が内定したら結婚してほしい」


「は、はぁ?…はぁ!?え、え?ど、ええー」


どういうこと。

意味、わからん。

え、えーと、私、七松くんとそんなに関わりあいなかったよね。

いや、あったと言えばあったけど。そういえば、一日一回は絶対出会ったし、毎日会っていたような気もする。

でもそれは七松くんは体育委員会があったからで…って、あれ?そんなに毎日委員会があったっけ?いや、平くんを連れている日はそんな毎日ではなかったような。

ココ最近は会話もするようになったし、着物借りた…し…?いや、え、でも意味わからん。

どこでどうやってそういう風になった。


誰か説明して!!


ふらふらとした足取りは何時の間にか止まっていて、ぼんやりとした頭の中をひたすらぐるぐる回転させて考える。

ぷしゅーと私の頭から漫画のような効果音が聞こえたような気がした。そういえば、ココ、漫画だったね。


「小平太ぁぁああ!!何で保健室の前で言うんだよ!!!僕達が恥ずかしいだろ!!」


「あ、伊作!空気読め!!」


「お前が空気読め!!」


パァン!!

と勢いよく障子をあけて、出てきた善法寺くんは、勢いよく七松くんと言い合いを始めた。

保健室に入ろうと、七松くんの手を離して進む。あーえーと、とりあえず…目があったね。数馬くん。

気まずそうに私を見ている君に助けを求めます。


「びょ、うにんですー」


私の頭がオーバーヒート。白んできた視界と思考に思いっきり身を任せる事にします。

くのたまの毒実験に知らぬ間に付き合わされていた私を誰か助けてください。主に発熱で、さっきは幻聴がありました。

そんな状態に私に何か言うなんて、ほんと、意味わからん…あれは私の幻聴だったに違いない。



→七松視点

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