保健室で待ってるの
実習の授業で失敗してしまった。
その所為で補習が決定したのだけれど、補習の内容に僕は溜め息を吐きそうになる。
内容は、事務員のお姉さんを泣かせるということだった。
日が暮れるまでに泣かせないといけなくて、朝から後ろをつけていたんだけど、お姉さんは忙しそうでテキパキ働いている。
女の人なのに、あんな重い物を持ったり、大変そうだ。
こんなに頑張って働いている人を泣かせるなんて気が滅入る。そもそも表情がけわしくて泣くかどうかわからないし、ちょっと怖い。
言葉で行こうと思っていたけど、言葉で泣いてしまう気はしないから、ビックリさせて泣かせた方がいいかも。
そう思って、ホウキを目の前に走り出したお姉さんの足に縄を引っかけた。
ちょっと転んだらビックリするかも、そう思っていたけれど、僕の不運が移ってしまったのか、お姉さんは落とし穴に落ちてしまった。
縄を回収して、お姉さんの表情がわかる所まで気配を消して近づく。
「…痛い、なぁ…」
「ぁ…」
お姉さんは泣いていた。
泣くとしても、ぽろぽろ泣くくらいかな。そう思っていたのに、お姉さんは僕の予想を多いに上回る量の涙を流していた。号泣レベルだ。
こんなに泣かせちゃうなんて!!
ショックで体を動かせないでいると、先生が僕の肩をぽんと叩いて合格だと言ってきた。
合格なのはいいけれど、この状態をどうすればいいんだろう。
僕は保健委員だから、お姉さんを保健室に連れて行くべきだろう。でも、怪我してるかな?
天から降ってきたって言う噂が流れているくらいだし、怪我なんてしないかも知れない。
迷っていると、お姉さんがフラフラと穴から起き上がった。
肩をかばっているように見える。目を凝らして見ると、何だか妙にぶらぶらしている。
…もしかして、脱臼してる?去年、藤内が脱臼した時もあんなふうに、腕が揺れていたのを思い出す。
声をかけるか迷って、声をかけようと決心して足を進めたら、蛸壷に落ちてしまった。
綾部先輩のターコちゃんだ!毎日落ちてるけど、今落ちなくても…。
今日は運よくクナイを持っていたから、這い上がる事ができたけれど、お姉さんはもういなかった。
どうしよう、声をかけられなかった。
はぁ。とため息をついて、トボトボと保健室へ向かう。
善法寺先輩が居たはずだから、先輩に相談しよう。お姉さんも怪我してるだろうから…保健室にくるはずだ。
保健室で、いつ入ってくるんだろうとドキドキしていたら、お姉さんが帰って行こうとして驚いたのはまたの話。
あとがき
かなり軽い補習です。数馬は酷い失敗をしていないのでこのレベル。
まわりは主人公が間者じゃないか疑ってたけど、ここいら辺から一般人だと理解し始めます。
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