不安と期待、ぐちゃぐちゃ。4

保健室に入ると、五年生の男の子しかいなく、先程まで忙しいのかと思っていた室内は静かだった。


「あ、数馬。連れてきた?」


「はい」


「こ、こんにちは」


「こんにちは。数馬が言うには脱臼してるんですよね。見せて下さい」


「え、あ、はい」


緊張しながら挨拶をすると、にこやかに返してくれた。五年生の男の子の表情にちょっと安心したら、すぐに表情がけわしくなる。

それに戸惑ってしまったけれど、言われた通り服を脱いだ。きちんと袖なしの襦袢を中に着こんでいるので裸ではない。

新野先生が見てくれると思っていたけれど、どうやら男の子が見てくれるらしい。五年生だし、上級生だから知識も実績もあるのだろうから先生がいないのも頷ける。


「どうしてもっと早くこなかったんですか」


「す、すみません」


「もう、はめるならさっさとやった方がいいんですからね!あ、数馬。どうせだから関節のはめ方覚えてみようか」


「はい!って、お姉さんに許可取らなくて大丈夫なんですか?」


「あ、御構い無く。むしろ私の腕でよければどうぞ…最終的にはまれば良いですから」


私の事を室内まで引っ張ってきた男の子の名前は数馬くんというらしい。

腕をさわって関節の位置の説明をしている上級生の男の子が何度か呼んでいるので名前に間違いはないだろう。

不安そうに私の腕を見ている数馬くんに言いたい。私も不安です。

入る前にはなかった緊張感が私に出てくる。


御構い無く。最終的にはまれば良い。


自分で言ってしまった言葉だけれど、これ、うっかりしたら拷問へとステップアップしないだろうか。

構いもせずに、練習のために何度かはずされる関節。何度もはめられる関節。はまった状態になったとしても、練習なのでまたはずされる。

左側の練習だけじゃ物足りないと思われたら、右側の関節を外し…ああ、考えただけでもこわい。

私、今日の仕事終えられるかなぁ。あとはお風呂を沸かすだけなのだけれど、そんな状態になってしまったら今日はもう動けなくなるかも知れない。


「はめますよー歯を食いしばってください」


「善法寺先輩。この状態で大丈夫ですか?」


「うん。その状態でいこう」


ぐっと勢いと痛みがきて、目を瞑った。

これは確かに歯をくいしばった方がいいかも知れない。かなり痛い!けれど、外れた時よりは痛みは感じなかった。

ぽろっと涙が一瞬こぼれるけれど、涙なんてちゃちなモノは気にせずに、はめてくれた本人にといかけた。


「え、と…はまりましたか?」


「せ、先輩。うまくできましたか?」



 

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