不安と期待、ぐちゃぐちゃ。2



ホウキは私が立てかけた状態そのままで放置されていた。よかった。片付けられていたら、どこに片付けられたか確認しに走らねばならない。

太陽も傾きかけているし、早めに夕食をいただかないと生徒たちと一緒に食べるという恐ろしいことになってしまう。

見つけた事にホッとして、駆け足でホウキに近寄った。

くん。と足に何かがひっかかる。


「えあっ!?」


転びそうになるのを、片足でケンケンとジャンプして留める。


「せ、セーフ…ぅ?わ、ぁあ!!」


やば、目印があるのに罠踏んじゃった…!!

ずぼっと足元からエレベーターを下がっているような浮遊感を感じた。

けれど、それも直ぐに終わる。深いと思っていたから、直ぐに着た衝撃に対応できずくぐもった声が出た。

とっても浅い穴だ。体は全然うまっていなくて、上半身は外に出た状態。


「…痛い、なぁ…」


痛みに、涙が出てくる。全体的に体がいたい。そりゃそうだろう。深いと思ったから体勢はもう少しあとに変えるつもりで、ただ体を硬くしただけだった。

この穴には、落ちた時の衝撃吸収になる葉っぱも特になく、階段から落っこちて地面にたたきつけられたくらいの衝撃だと感じた。

涙が流れるのは慣れてしまったので、そのまま放置。

とりあえず起き上がらないとどうしようもないと思い体を動かす。けれど、左腕が動かないので、ん?と顔を左腕の方へ向けた。


「う…気持ち悪い…」


ぶらん。と腕が垂れている。認識していなかったけれど、脱臼しているようだ。全体的に体が痛すぎて、気付いていなかった。

これは保健室に行かないと直せないだろう。

自力で直すなんて考えたりはしない。こわすぎる。

小さい頃、脱臼した時は整体院に連れて行ってもらったし、しかるべき所で直してもらわないと癖になるらしいし、行くのはこわいけれど行かないといけない。

認識した途端に、全体的に痛かった体の痛みが左腕に集中して流れていた涙の量が増えた。


前が見えない。


これは落ち着いてからじゃないと動けないなぁ。

こんな状態で歩いたら、ただでさえ罠にかかって落っこちちゃったのに、更に違う罠にかかっちゃう。

涙が出て、ボロ泣きなのに頭の中は冷静だ。

だって、だって泣きわめいても何をしてもこの状況は変わらない。

私は仕事のできないタダ飯食らい。泣きわめいても何をしても、こんな奴を助けるモノ好きなんていないのだ。

だったら自力で落ち着いて動いた方が効率的である。

泣くのは仕方ない。だって出ちゃうものは出ちゃうもんだ。

少し落ち着いて、涙の分量が減ったので動き出す。保健室に行くのはホウキを事務室においてからにしよう。

自分のケガはあとにまわさないと…仕事もできないのに、ホウキすら返さないなんて、死亡フラグがハンパなく立つはずだ。

こわい。こわすぎる。

ホウキを、右手でとって用具の方へと向かうついでに、私が何に引っかかって転びかけて穴に落ちたのかを確認しようと思った。

ツタとかだったら、取っていいか吉野先生に聞かなくてはならない。

歩きながら、キョロキョロと地面を見渡す。

けれど、そこには何もなかった。

…もしかして自分の足に引っかかって転んだのかも知れない。

転んだあとの感覚しか覚えていないから、足に何かひっかかったという事しか覚えていないし、たぶん自分自身に引っかかって転んだんだろう。


……はずかしい…。



 

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