目を開けたら、またさっきみたいに、真っ暗だった。
あたま…いたい。さっきより断然いたい。
小さく呟こうとしても、ふがふが息が漏れるだけで、何も出ない。
…もしかして、さっきの箱の中にいるのかも…狭さが同じだ。
さっきと違うのは、身動きがさっきよりも全然できないところくらいだろうか。
口には何か、布みたいな舌触りのモノが突っ込まれてる。
腕も動かせないし、しばられているのかも。
…どうせなら、意識が戻らなければよかったのに。
あの、おばあさん、何かこわかった。
カマで、殺されるかと思ったし…たぶん、もうちょっとしたら…。
本当に、殺されちゃう。
ぶるっと身体が震えた。
何がいけなかったの?私はただ、ただ学校から帰る前に寄り道しただけなのに。
こんな変な所になんてくる予定はなかったし、殺される予定なんてもっとなかった。
お家に帰りたい。
殺されそうな場所になんていたくないよ…!!
涙がぼろぼろ溢れてくる。
鼻水も出てきて、うまく息ができなかった。
声を出す事も出来ない。苦しい。けど涙は止まらない。誰も助けてくれたりとか、しないのに、なんで泣いてるんだろう。
切なくなって、更に涙がこぼれた。
ドーン!!
と大きな音が聞こえて、びくりと身体が動く。
なに、何の爆発音!?もしかして火を焚いてたりとかするの?カゴの中に入れられたまま丸焼にされちゃったり…?
嫌な想像をしてしまった。
どたばたと、私の周りを走るような音が聞こえる。
終わりが近づいてる?わからない。
ただ怖くてしょうがない。
しばらく何かが暴れまわる音が響いた。
あのおばあさんの声も時々聞こえる。誰かと喋ってる…?声が遠くて何を喋っているのか全くわからなくて、それが恐怖心をさらにあおった。
音が止まった。
急に止まった音に、怖くて怖くて…トイレに行きたいと思ってしまった。
死ぬ前に何かしら出してから死にたい。
尿意が現れると、怖くてしょうがなかったのに、だんだん死ぬ決心みたいなのがついてきた。
近くには誰かが喋っている音が聞こえる。私の最後は近いのかな。
「なんだァこの箱?でっけェお宝でもいれたような大きさじゃねェか…ぷふふ!あの妖怪婆、良い物隠してるんじゃ…!!」
「わん!」
「一閃でもかましてやらァ!って、アマ公!?」
どしんと大きな衝撃が急にきた。
フタを開けるとかじゃないの!?悲鳴をあげたいけれど、口をふさがれているのでふごっと変な音が出ただけだった。
「人間!?しかも変なカッコしてらァ……おい、姉ちゃん大丈夫かァ? あ、喋れねェのか…アマ公!」
「っぷぇ、は…え、え?犬が喋ってる…え、いぬ…虫…ようせ、さん…?」
カゴの外にいたのは、おばあさんとかじゃなかった。
真っ白なわんちゃんと、ちっちゃい…人だった。虫かと思ったけれど、人だ。
「けぇー!!ったく、どいつもこいつもオイラを虫ケラよばわりかよォ!!」
「え、え?ご、ごめんなさい…あ…わんちゃんありがとう」
「わん!!」
口に入れられた詰め物と、腕に巻かれていた縄をどうやったのかはわからないけれど、わんちゃんがとってくれた。
……もしかして、さっきのおばあさんはいないのかな。私…助かった?周りをキョロキョロ見る。見当たらない。
「姉ちゃんどうしたんだァ?青い顔してるぜェ」
「…さ、っき、おばあさんいません…でした?変な影の、その…」
「…あァ、姉ちゃんあの妖怪婆に捕まっちまったのか あの婆はこの一寸様とアマ公が退治してやったから安心しなァ!!」
「それって、本当ですか…?」
ちっちゃ過ぎてわかりにくいけれど、虫のような大きさの人が頷いたのが見えた。
わん。と一鳴きしたわんちゃんの声になんだか安心して足がガクガク震えて立てない。
…尿意だ。これはちょっとした衝撃でもらす。
言いだしにくいけれど、これは言わないと…トイレはどこですか。って。
恥ずかしくて目線がウロウロ彷徨っていると、家の入口に見た事のあるような影がうつった。
「ワンちゃん!早くチて、サキを探さなきゃ……サキ!?家の中に居たんでチュか!!もう、どこにいったのかわからなくて心配したんでチュよ」
「チュンジャクちゃん!よかったぁ…食べられちゃったのかと思ってました」
「なんでェ!こいつがサキか、探す手間が省けたなァ」
「わん!」
「さ、行きまチュよ!早く帰らないと…おっ父が心配してまチュわ」
「面倒事はさっさと済ませるにかぎるぜェ、とっとと案内しやがれってんだ」
ぐいっとスズメなのにどこにそんな力があるのかわからない強さで身体を引き上げられる。
…このまま徒歩フラグがハンパない!やばい、本当に言わなきゃ!!羞恥心なんてもうどうにでもなれ!!
「ま、待って!!」
「どうかチたの?」
「そ、その…お、お手洗いに行きたい…の」
「「……」」
「わふ?」
…チュンジャクちゃんに黙って手を引かれて案内されました。