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ホメロス(メイド)


前回のホメロスSSの続き(名前変換あり)



兵役に就く者の朝は早い。…のだが、今日はいつもよりも睡眠時間を得られる日。顔に感じる光は朝日だろうか…そうか、もうそんな時間か。ゆっくりと目を開ける。


「え〜んえ〜ん!!助けてグレイグ〜!!ホメロスが死んじゃうよぉ〜〜!!うわ〜〜ん!!」


……すぐ側に変な奴らが見えた。メイドとして働く幼馴染と、英雄と呼ばれる同僚グレイグ。またこいつらか。今度は一体なんだと言うんだ。

「ホメロス…まさかお前が、フルーツサンドの食べ過ぎで死んでしまうなんて…。くそっ、あの時もう少し抑えろと言っておけば…!」
「うわ〜ん!ホメロスの馬鹿野郎〜!!」


どうやら寝ているオレの側で寸劇が繰り広げられているらしい。
本当に何をやっているんだお前達は。グレイグは朝早くから仕事があった筈だ。ナマエにもオレを起こしに来る仕事なんてない筈だ。
いや、それよりもその無様な死因はなんだ。ツッコミどころが多すぎる。


「…………。」
「うわ〜ん!!起きてよぅホメロス〜!!」
「うっ…ホメロス……」


芝居が下手にも程がある。なんだその棒読みは。グレイグに至っては真顔じゃないか。


「え〜ん!!」


久しぶりに長く睡眠を取れると思っていたのに、こう邪魔をされては仕方が無い。
面倒だがオレがツッコまないとこの茶番はいつまで経っても終わらない。こいつらはきっとオレが起きるまでずっとこれをやり続ける。
ふぅ、と心の中で溜め息をついて、そしてひと呼吸。


「…おい、勝手にオレを死なせるな」


勢いよく起き上がって、アピールをしてやる。


「ほ、ホメロス…!やったグレイグ!私達の祈りが通じた!」
「ああ…!」

こちらに気付いた二人は目をくわっと開いてオレを見つめる。
なんだその目は。まさか本当にオレが死んだとでも思っていたのか?一体何が目的なんだ。


「……そんな事までしてオレを起こすということは、何の用だ」


人の睡眠の邪魔をしておいて、目の前でしてやったりという顔をしている朴念仁二人に対して無性に腹が立ち、不機嫌な心情を隠さずにそう言い放つ。


「え〜っとですね、ホメロス隊長!実はお知らせがあります!」
「…だから、なんだ。早く要件を言え。今日の仕事は昼からなんだ。まだ眠れる」
「その仕事が、予定変更により9時からとなりました!」
「……は?」


思考が固まる。9時。9時から。昼からの仕事が予定変更により9時から。


「………おいグレイグ今何時だ」
「……8時30分だ」
「30分だ!」
「馬鹿者早くそれを言え!あと30分しかないじゃないか!」
「イエース!その為に我らはここに馳せ参じたのだ!わはは!」
「笑い事じゃない!」


じゃ、仕事は済んだから行くね〜!!とナマエはとてつもない速さで部屋を出ていく。グレイグはちょこちょこと迷った後に一つ咳払いをして出ていった。
本当にお前らはどうして昔からオレにちょっかいを掛けてくるんだ。毎度毎度、こちらは嵐に見舞われたように疲れるというのに。


「……まあ、嫌ではないが」


こっそり本音を漏らす。これでも長い付き合いだ。あいつらの癖は見抜いているし、対処法だってわかっている。昔は共にイタズラを城内に仕掛けた仲だ。
今回だってオレを想っての事なのだろう。正直助かった。……あの演技はいかがなものかと思うが。


「…あと30分か」


窓からは嫌になるくらい明るい日差しが射し込んでいる。はぁ、と溜め息をついて、準備へと取り掛かった。