「たっだいま〜」
「おー、おかえり…って、なんだぁその荷物は！？」
「これはね…ちょっと色々ありまして…」
「取り敢えず寄越せ、居間に持ってくからよ」
「うえ〜んありがとうカミュ〜」
「見たところ殆ど菓子みてえだが…どうしたんだぁ？これ。行く時は持ってなかっただろ？」
「実はね、今日はハロウィンの日なんだよ」
「ハロウィン？」
「そうそう。外国の文化なんだけど、最近この国でも有名になって定着してきたんだよね。仮装したり、くり抜いた黄色いカボチャをとかそれに模したものを飾ったり、『トリックオアトリート』って言ってお菓子を強請ったり」
「へぇ…その、『トリックオアトリート』ってどんな意味なんだ？」
「悪戯かご馳走かって意味だよ。お菓子をくれなきゃイタズラするぞ〜って感じ」
「ふーん、奇妙な祭りもあるもんだ」
「ま、本来は子供がやることなんだけど、外国の文化を良いように解釈してるから単なる行事みたいになってるんだよね。…で、そんなイベントがある日だって事を忘れたまま大学に行ったら…酷い目にあって…」
「…あー、菓子持ってねえから悪戯されまくったんだな…そりゃ気の毒に」
「おおおおん！！不覚だ〜！！！」
「確かになまえにしては珍しいな。そんな祭りの事を忘れるだなんて。好きだろ、そういうの」
「そうだよ〜好きだよ〜！でも、昨日はバイトで疲れてたから全然思い出せなかった…わ〜ん！私のバカ〜！！」
「昨日はスゲー早く寝たもんな。ま、これで最後ってわけじゃないんだろ？次は忘れんなよ」
「うん…」
「で、だけどよ」
「…ん？」
「結局このお菓子はどうしたんだよ」
「あー、これはね、貰ったの。なんか、イタズラされまくってるのが可哀想だからってみんながお菓子くれたんだ。最後はお菓子交換会になってたよ」
「だからってお前こんなに…」
「んで、忘れたのが悔しくて私も帰りに追加で買ってきた！カミュも居るし、お菓子パーティーだ！って思って」
「……はぁ」
「なによ〜そのため息は〜」
「いや、お前らしいなって思っただけだよ」
「え〜〜」





「もぐもぐ…おいしー！淹れたお茶も美味しー！」
「美味そうな顔して食うよなぁ、お前」
「そう？…あっ、カミュは大丈夫！？こっちのお菓子とか口に合う！？」
「ああ、大丈夫だ。美味いよ」
「そっか…えへへ〜よかった」
「ん、そういやアレ言わなくてよかったのか？」
「アレ？」
「トリックオアトリートってヤツ」
「ああ〜…。うーん、お菓子あるし、イタズラ思い付かないし…いいや！」



2019/11/1