-奪われた真実-07 「そらぁー、こうした方が面白そうだと思ったからさ」 「っ!」 くるくるっとステップを踏んだ杳馬がグッと顔を近付けてきた為、それを避けて数歩下がる。 杳馬の革靴がぐりっと赤い花びらを踏み潰し、タバコの灰がポトッと落ちて花びらを焦がした。 「あんたはさ、とっても珍しいのよ」 今まで、この二百数年毎に行われる聖戦に、ペルセポネの魂はなかなか介入しなかった。 それどころか、ハーデスを避けるかのように遠くの地で生まれ育ち、挙句の果てには冥王を拒絶する。 なのに、今回のあんたは離れていても少年想い続けた。 そして、想いを実らせてしまった。 「それだけでも面白いのに、あんたはペルセポネである事を受け入れて、自分の意志で今此処にいる――……だよね?」 「……ええ、そうよ」 「フフ、それを素晴らしいと言わずにいられると思うかい? 否、もう賛美する言葉しか出ないさ」 あんたは良い、と何度も呟いた杳馬は新しいタバコを取り出すと手品のように指先から火をつける。 「それに、今回のあんたは器の少年だけでなく、冥王様にも好かれてるらしい。 だから、今器の彼は焦ってるんじゃないかなー、なんて」 「……どういう、こと?」 「まあまあ、そんな怖い顔しなさんな。冗談だよ!まあ、冥王様が実力行使しようとしても、器の少年が守ってくれるから大丈夫だよ。今はね」 [*前] | [次#] 戻る |