-奪われた真実-06 次にレグルスが目を覚ました時、母親の死には首を傾げるだけだった。 勿論、片割れの事など始めから居なかったように全く忘れ去ってしまった。 生まれて始めてあんな光景を見てしまったのだ。 変に刺激すれば思い出してショックを受けるかも知れない。と、イリアスは多くを語らなかった。 ただ、母はどこにでも居る。お前を見守っている。 とだけ告げて、レグルスと共に星空を見上げた。 ぼんやりと空を眺めていたレグルスだったが、やがて小さく口を開いてポツリと呟く。 「……おれ、よく分からないや」 「……」 我が子の悩ましげな顔を見て、悲しそうに目を伏せたイリアスの胸元で質素なネックレスが揺れた。 「……―――」 言葉を失い、ただ立ち尽くすエレナの手の内から赤い花びらが滑り落ちた。 呆然として現実を受け止め切れていないエレナを眺めながら、杳馬はフヒッと下品な笑みを零して口角を吊り上げる。 「ふたり揃って、"眼"は良いよねェ」 「っ!メフィストフェレスの杳馬!今のは、本当に」 「ああ、事実ですよ勿論♪」 何をいまさらー、と笑いながらペガサスの背を撫でて鼻歌を歌う。 「そして、イタリアの孤児院に置き去りにされた幼いペルセポネ様は、とある少年と運命的な出会いをする。アローン!愛おしいハーデス様の魂を持つ器の少年に!!!」 「!!」 よろけて膝をついたエレナは信じられないモノを見るような目で杳馬を見上げる。 「わ、たし……」 「どんなに姿が変わろうと魂は惹かれあい、お互いを求め、やっと今世紀になって結ばれましたっ!はい、拍手!」 パチパチとおどけたように自ら拍手をする杳馬に「黙りなさい!」と一喝するとニヤニヤしながら降参のポーズをとる。 ぎゅっと強く衣の裾を握ったエレナは、杳馬を睨むように強い瞳で見返した。 「私は、ハーデスだから彼が好きになったのではありません!アローンだから、彼だから好きになったのです! その彼と出会うきっかけをくれた事は感謝しても良い位よ。 でも、だからと言って他の人間の人生を狂わせて良い事にはならない。 貴方のした事は間違ってます!何故このような事をしたの!? 答えなさい!!」 ハァ…と一息に言い放って深く息をついたエレナに、フフッと杳馬は小首を傾げる。 [*前] | [次#] 戻る |