-奪われた真実-03 

「んー、んー」


焼かれた魚にかぶりつき、豪快に食べる少年の隣で頭辺りからちまちまとゆっくり食べていく少女。

そんな二人を眺めていた彼女は淡く微笑んだ。


魚から口を離した少女は、両親が野菜しか食していないことをみて首を傾げた。


「かあさまたちは、どうしておさかなをたべないの?」
「願掛けでお肉を絶っているのよ。二人が無事に成長しますようにって」
「じゃあ、わたしも」
「エレナは優しいわね。でも、ダメよ。ちゃんとお食べなさい」



少し不服そうに魚を見下ろした少女が大人しく食べ始めた事に安堵したように笑うと、隣に座している夫へ目を向けた。



「あなた、水注ぎますね」
「……」


黙って差し出して注いで貰うも、その父親の表情が微かに緩んでいる事に気付いている双子は顔を見合わせて笑った。



















「エレナ、エレナ。なにしてんの?」
「れぐるす…」


朽ちて倒れている大木によじ登り、その上で座って星を眺めていた少女に寄り添うように座る。


片割れを一瞥した少女は、再び吸い込まれるかのように闇空を見上げて小さく息をついた。



「誰かが、暗いところでずっと泣いてるの」


ぽつぽつ、と呟くようにそう告げる少女をジッと見つめたのち、少年も空を見上げる。


「私のこと待ってるから、早く行ってあげなきゃいけないけど………そうすると、レグルスが独りになっちゃうから、ダメって言ってるの。

代わりに夜だけ、一緒に居てあげようと思って」
「ふーん…おれは分かんないや」



並んで座って空を見上げていたが、いつの間にか二人とも眠気に負けて寄り添うように眠り始める。



「……あらあら」

二人の姿を探しに来た母親は小さくため息をつくと、二人を胸に抱いて微笑む。



そして娘がしていたように星空を見上げると、悲しそうに目を伏せた。

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