-春乙女-11 「デジェル、ココはなんて読むの?」 「あぁ、フランス語記述ですね。ココは……」 教皇の許可が降りた為、デジェルから星見を習い始めた。 聖域一の知の聖闘士と名高いデジェルに付きっきりで教えて貰うだなんて、なんと光栄な事だろう。 チラリと隣を見ると、メガネをかけて凛とした顔のデジェルが目につき、視線に気付いたのか相手もコチラを見た為慌てて視線を戻した。 真剣な表情で本と向き合っている顔が、一瞬彼に似てるだなんて…… (救いようがないのね……私) 息を漏らすと、デジェルはパタンと分厚い本を閉じて立ち上がった。 「今日はここまでにしましょう。後日、星が良く見える夜に宝瓶宮にお越し下さい。実際に肉眼で見てみるのも良いでしょう」 「そうね。じゃあ――……」 本を戻そうと立ち上がった時、大気が奮え、本が机からなだれのように落ちた。 ふと、宝瓶宮の外に見えた島から煙が上がる。 「またか……」 呆れたように呟いて落ちた本を拾い上げるデジェルを手伝う。 「最近よくあるの?」 「ええ、この宝瓶宮はサンクチュアリ近海がよく見渡せます。……近頃、カノン島が小規模な噴火を繰り返しているようで」 「カノン島……?」 『カノン島。やがて来る戦いに備える。もっと己の輪郭を強く……強靭に!! 鬼の如く!!!』 「……元気そうね、デフテロス」 「?原因に心当たりが有るのですか」 「うーん……そうね。カノン島には、鬼がいるの」 「鬼?」 「ええ鬼よ」 再び、空さえも揺るがすような大気の奮えを感じて笑みを漏らすエレナを見たデジェルは訝しげに首を傾げた。 [*前] | [次#] 戻る |