-春乙女-04 

「!!」

意識が浮上した瞬間、ガバッと飛び起きる。



(………夢……?)



ハァ……と安堵から深く息をつくと、何故かレグルスが傍らで不安そうに顔を覗き込んでいた。



「レグ、ルス……?」
「大丈夫かエレナ。怖い夢でも見たのか?」
「うん……でも大丈夫」


何故此処に?という疑問より先に、彼を安心させようとして笑みを向けると僅かにレグルスは眉を寄せた。



「うなされておりましたぞ。今日はもう神殿に戻られると良いでしょう」
「……ハクレイ…」


掛け物を掴んで立ち上がろうとするも腰が抜けており、何か言う前にレグルスが素早く抱え上げた。



「レグルスっ、良いから!大丈夫よ」
「何言ってんだよ!震えてるくせに」
「!」



改めて己を見下ろすと、先程夢の中で血に濡れた両手は端から見ても震えていた。

ギュウッと掛け物を握る。




「あまり不用心にうたた寝してしまうと、夢に連れて行かれてしまいますぞ」
「……そうね。女神がこんな所でうたた寝するなんて良くないものね。気をつけるわ」
「…………ふむ。では、私は先に」



一瞬でその場から去ったハクレイの小宇宙。
レグルスもコチラを抱え上げたまま神殿への道を歩く。



「レグルス、ありがとう」
「ん?あぁ、別に気にすんなよ。俺にとってエレナは全然重くもなんともねェから!」
「そうじゃなくてね………。このマント、レグルスのでしょう?ありがとう」



抱え上げられたままギュッとマントを抱きしめると、その温もりで震えがおさまっていくようだった。



「………あったかい」
「!!」



若獅子がバッと顔を赤らめた事に気づかず、尾を引く眠気からその逞しい胸板に頭を預けた。




(……っクッソぉおおおッ!!)



心の中で吠える獅子に気づかない幼い女神は、天然である故にことごとく残酷だった。



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