無色の感情 ※嫁がエディルレイド 私には、普通の人には言えない秘密がある。 それは、私が人ではなく『エディルレイド』という特殊な種族という事。 エディルレイドは、体のどこかに『核石』と呼ばれる見た目は綺麗な宝石をした特殊な石を持って生まれて来る。 そして、エディルレイドは一人のプレジャー(使い手)と契約することで、その身を武器に変化させて戦うことが出来る。 そんな特殊なエディルレイドは、エディルレイドと人間が交わるか、それとも体の中に埋まっていた核石が死後に離れ、数百年をかけて石から産まれて来るか、しか繁殖する術を持たない。 私の両親や先祖たちはれっきとした王族で、人間。 エディルレイドと交わった事がある王族は居なかった。 そもそも、私の国ではエディルレイドは差別の対象でもあったから。 なのに私は、エディルレイドの証である核石を持って生まれた。 勿論これは極秘情報として隠され、戦争でエディルレイドを使用しているという煌帝国に嫁ぐ際にも隠される筈の秘密だった。 でも嫁いですぐ、自分の夫になる人だとは知らなかった紅覇様にその秘密を漏らして以来、紅覇様やその周りの部下の方々もひっそりと隠してくれている。 私は、まだ誰とも契約をしていない。 エディルレイドは一人の人間としか契約できない上に、もし別の人と契約したくとも契約した人間が死ぬまでは誰とも契約することが出来ない。 だからお兄様には「慎重に選びなさい」と言われているし、紅覇様も「夫だから僕と契約しなきゃいけないって事もないでしょ。お前の好きにしな」と自由にしてくださってる。 「そう言えば、天音。お前の『核石』見せてよ」 「……えっと……それは、ちょっと…」 「え〜?良いから見せなよ〜」 「え、エディルレイドにとっては『核石』を見られるのは、裸を見られるより恥ずかしい事で……その……」 「女の裸なんて見慣れてるし、お前の裸だっていつか見る事になるんだから一緒でしょ。ほらほら、見〜せ〜て〜ってば!」 「〜〜っ、分かりました」 紅覇様の他に誰も居ない事を確認して、するっと袂を緩める。 左鎖骨の下辺りに紫のアメジストが埋まっている様子を見せると、感嘆の息を漏らす紅覇様。 それが恥ずかしくて、顔を覆ってしまいたくなる。 「やっぱり、綺麗だね」 薄紫色で、光の角度によっては赤色を帯びて見えたりする『核石』 私のように純度が高い物は、結構な値段で取引がされるらしい。 エディルレイドが取引されるときは持っている能力なども商品価値に含まれる。でも私は突然変異で産まれた特殊なエディルレイドの上に、契約もしたことがないから自分の能力や寿命とかはあまりよく分からない。 ……かろうじて、属性を調べる道具で『光』属性を持つエディルレイドだということは解ってる。 光属性と風属性のエディルレイドは希少種らしく、そう考えれば更に値段は吊り上がるのかもしれない。 それも、下手をすれば小国が傾くほどの。 昔、エディルレイドだからという理由でマグノシュタットというエディルレイドの国に連れ去られそうになったこともある。 私の家庭教師をしていたエディルレイドの先生も、私の能力を買ってくれている。 強い使い手と契約すれば、もの凄い力を得る事が出来るだろうとも、言われた。 ………でも、紅覇様は私に選ぶ権利をくれている。 優しくしてくださってる。 (いつか、紅覇様に何かお返しをして差し上げたいな……) エディルレイドに比べて人の寿命は、短い。 私と紅覇様の時間は、無限じゃない。 限られた時間の中でしか生きていけない。 そう思うと、胸がチクチクして鉛が加わったように重く感じた。 この感情に、まだ名前はない。 2015 執筆 20160526 加筆公開 戻る ×
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