魅力 「これが全部、皇族への貢ぎ物でしょうか……」 「そうだよぉ〜。って言っても、これは炎兄や明兄たちに比べたら全然だし、余り物みたいな感じかな」 広めの部屋が埋まってしまうほどの数多くの貢ぎ物を前に、開いた口が閉まらない。 私の国でも貴族から皇族に対する貢ぎ物などは無かったわけではなかったけれど、こんな量は見た事ない。 さすが煌帝国。 さすが今勢力を広げつつある侵略国……。 「皇族って唯でさえ貢ぎ物が多いんだけど、あんまり多すぎても邪魔だし、盗まれそうだしねぇ。だから僕は必要な分以外は全部部下達に配給しちゃうんだ。 だから、お前もあげちゃう前に好きなやつ貰って良いよ」 「ありがとうございます」 綺麗な貴金属、煌びやかで質のいい宝石、繊細な反物。 珍しい西の国の小物から、美味しそうな果物。 中には露骨に札束が詰まった箱などもあり、ついつい苦笑いする。 折角の紅覇様の好意なので、せめて何か一つでも頂こうと思って色々なものに目を向ける。 でも欲しいものが特になくて決めかねていると、隣で私の様子を眺めていた紅覇様が分かり切っていたかのように小さく溜息をついてずらりと並んでいる反物に手を伸ばす。 「ホントお前って欲がないよねぇ…。美点でもあるんだけど、少しくらい欲しがってくれないとプレゼントし甲斐がないかな」 「あはは…、申し訳ありません」 「謝んなくていいしィ〜!じゃあ僕が何か布選んで羽織作ってあげる。お前、オシャレに興味ない上に自分の服装とかには結構無頓着なんだから、黙って僕に選ばれてな」 「はぁい」 手触りの良さそうな綺麗な反物を手に、私にどんどん当てて幾つかを選び出していく。 そのどれもがセンスが良くて、私の趣味にもピタリと当たってる。 「全部素敵ですね」 「でしょ。お前も魔法ばかりじゃなくて、もう少し頑張んな」 「うーん…難しいです」 「はは。ま、無理にとは言わないけどね。 炎兄も明兄もだけどさ、何かに特化してるとダメダメなところが出て来るんだからしょうがないしー」 布を当てたあとも、それぞれに似合いそうな指輪や髪飾りといったモノも楽しそうに選び始める紅覇様。 ……紅覇様は、何でもそつなく出来る。 器用で、強いし、ご尊顔も綺麗。 美容にも気を使われているし、女性の扱いも上手い……。 私は魔法以外何も出来ないから、とても羨ましい。 人よりも劣っているところなんて少しも…。 紅覇様が純々様たちと並んで話しているのを見て、「あぁ…」と気づく。 (………身の丈が少しばかり…、うん) じーっと見てると、「なぁに?」と首を傾げられる紅覇様。 「いえ、別に」 「そんなにじっと見られたら気になるんだけどぉ?」 「えーっと。……紅覇様も、紅炎義兄様たちのことを言えない、かもしれないと思っただけで」 ほんの一瞬、紅覇様の頭の上に視線を向けたとき、何かに気づいたように反応すると不愉快そうに眉をひそめながら持っていた首飾りを乱暴に置かれた。 そして、そのまま大股で私の方まであるいてくる。 「…………何お前、お仕置きされたいの?」 「なんの事でしょうか?」 「お前さっきぜっったい失礼な事考えてたよねぇ〜〜?ん〜〜?」 「何もございませ」 「じゃあ、なんで僕のこと真っ直ぐ見て言えないのかなぁあ〜〜〜???」 顎をわし掴まれて無理矢理自分に向かせられた紅覇様の顔は笑ってました。 でも、何処が鳥肌がたつような、凄惨さが滲み出ていて…。。 「で、何か言いたいことはある?」 「も、申し訳ございまへんでひた…」 「やだね、ぜっったい許してやんな〜〜い! 僕の気が済むまで付き合って貰うからね!」 「え”!そ、それは…」 そろそろ、っと後ろに下がって行こうとするも、にっっこりと笑われた紅覇様に腕を掴まれた。 「逃がさないよー!」 あはは!っと満面の笑みで笑いながらぐいーっと腕を引かれていく。 そのまま身の採寸、化粧品・香、アクセサリー…と色々なところに好きなように連れまわされて行く。 「あ〜、すっごい楽しかった!」 「そ、う……ですか」 20160314 加筆修正公開 戻る ×
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