空目式消毒方法「っ!」
真正面に座っていたあやめが、小さな悲鳴をあげた。
何事かと思い本から視線を上げるとあやめが眉間にしわを寄せ、右手の人差し指を見ていた。
「どうした?」
「あの・・、指を切ってしまって・・」
確かに、あやめの細い指先からは赤い雫が伝っていた。
空気が乾燥するこの季節、紙で指を切ることは多い。
空目と同じく本に夢中になっていたあやめは、失念していたようだ。本を捲る間に、指を切ったのだろう。
「絆創膏だな・・。」
「私、持って来ます・・。」
「いや、待て」
そう言って絆創膏を取りに行こうとしたあやめを制し、あやめの隣に座り、彼女の右手をとる。
それにしても、紙による切り傷は厄介なもので、まだ血が止まる気配は無い。
あやめの指先の血の雫はどんどん盛り上がっていて、垂れ流さん勢いだ。
(まずはこの血をどうにかしないとな。)
空目は何を思ったのか、あやめの指先を起用に絡みとって持ち上げると、そのまま自分の口まで運んだ。
何が・・?
あまりの突拍子のない行動に、あやめはしどろもどろになる。
「!!」
あやめが息を呑んだのと同時に空目は何の躊躇いもなく、あやめの指先を銜えた。
「きょ、恭一さ・・・っんっ!」
頬を真っ赤に染めあやめが身を捩ったが空目は気にせず舌先であやめの指先を[消毒]した。
けれど、いくら舐めとっても、傷口からはまた新しい血の味が滲む。空目は、取り敢えずその血の気配が消え失せるまで、あやめの指先を舌で転がした。
一方、指先から伝わる生温かい舌の感触に、あやめはパニック状態になっていた。恥ずかしいとか、くすぐったいとか、そういうレベルをすでに超えている。先程から身を捩るなり、腕を引くなり抵抗はするものの、全く効果がない。指先はまだ、空目の舌に囚われたままだ。
頬が、熱い。とても、おかしな気分になる。
「ぅんんっ・・、」
耐え切れずに洩れた声に、空目は指先を解放した。
「あやめ・・、おまえ何て声を出すんだ・・。」
「え、、あっ・・」
そう言われてまた顔が火照る。
「ばっ、絆創膏持ってきます!」
この場にいるのがいたたまれなくなり、慌ててその場を離れようとする。
そして唐突だった。
唐突に、空目が顔を寄せた。その先は臙脂色の服から覗くあやめの首元。
何が起こったのか分からなかった。気付けば首元に柔らかな感触が押し当てられていた。
スマックの音が響いた後、ご丁寧に唇を押し当てた箇所を一舐めしてから、空目は離れた。
今まさにあやめの首にキスをした唇を、端だけ器用に持ち上げて笑う。
「消毒のついでだ。どうせならこれぐらいはさせてもらう。」
「っ!!/////」
顔が真っ赤になったあやめを見て、空目は楽しそうに笑っていた。
fin.
サイト:
。+落チル涙+。* * *
音夜様のサイトにて800打を踏ませていただきましたので、そのキリリクに甘い空あや小説させていただきました。
そうしたら、とっても素敵で甘いお二人のお話を頂けましたよ!!
思わず切ってしまったあやめちゃんの指を、空目が舐めてしまうこの美味しいシチュエーション。
余裕に対応+妖艶で強引な空目様が素敵です(笑
そしてそれにおどおど慌てるあやめちゃんが、最後にはちょっと危ない声音を漏らしたりして・・・・・可愛すぎです(笑
きっと空目様はその後を堪えることが出来なくて、首筋に口付けしてしまったのですね!
ちょっと強引な空目様に振り回されるあやめちゃんの二人が何とも可愛らしく甘くて、とっても素敵でした!!
私の想像以上に愛らしい甘いお二人をくださってとっても嬉しいです♪
ではでは音夜様、本当に素敵な小説を有り難う御座いました!!
2009,2,11 水野佳鈴