今日、あの人が帰ってくる。
入用で江戸へ行っていた平助君。
1週間、会えなくて寂しかったけど、今日帰ってくるから。
だから私はとびっきりの笑顔で迎えるよ。
君だけの贈り物日が傾き始めた頃、彼は手を振りながら帰ってきた。
「お帰りなさい!」
「千鶴!ただいま、おそくなって悪ぃ」
私は待ちきれなくて平助君のもとへ駆け寄る。
そんな私を優しく包んでくれる。
その温もりは、出かける前と変わらない。
1週間の二人の空白なんて、一瞬にして溶けてしまったみたい。
「久しぶりの江戸はどうだった?」
「千鶴が一緒に居なかったからつまんなかった」
そんな他愛も無い話をしながら、私達を待つ家へと向かう。
ぷくーと頬を膨らます様子は宛ら子供の様。
それが可愛くてくすりと笑みが零れる。
「しかも千鶴の膝枕じゃないと昼寝もできねーし」
縁側に座るや否や、いつもの様にごろん、と寝転がり私の膝の上で頭を転がす。
そんな彼の髪をいぢるのもいつもの事。
…この1週間、まるで何年も離れ離れだったみたいに感じたけど、何も変わってない彼が居る。
その事実が、私の頬を緩ませてくれた。
「そうだ!俺千鶴にお土産買って帰ったんだ!」
「お土産…?」
飛び跳ねて起きると、懐から可愛らしい包み紙に包装された箱を取り出す。
それを、ちょっと照れながら私に渡してくれる。
「千鶴に絶対似合うと思ってさ」
「わぁ…!凄く嬉しい!!開けても良い?」
「もちろん!」
いつもは二人一緒に出かけるから、お土産なんて考えた事も無かった。
私はいそいそと箱を開けると、中から綺麗なガラス細工の簪を取り出した。
「綺麗…」
透き通る其れを空に翳してみる。
夕焼けに染まりつつある向こうの空がまるで違う世界みたい。
「平助君、ありがとう!一生大切にする!!」
「お、大袈裟だって///…ほら、付けてやるよ」
私の手から簪を取ると、後ろへ回る。
たどたどしい手付きだったけど、綺麗に付けてくれた。
「ん、やっぱり千鶴はこういうのが似合うよな!」
「ありがとう///」
素直な言葉が嬉しくて、つい赤面してしまう。
そんな私の様子に気づいた彼も、少し赤くなる。
夕日のせいか、余計赤く見えてちょっと恥ずかしい。
「なぁ、千鶴、今度は一緒に江戸へ行こうな。…約束」
「うん。…もちろん」
指きりをすると、優しく口付けをしてくれた。
小さな誓いは、夕日に飲み込まれてしまいそうだったけど、私の胸の中には何時までも在る。
絶対忘れられない、今日の事。
これからもこんな日が在りますように。
――きっと彼から貰うそんな時間も、私だけへの贈り物…――
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月奏* * *
相互リンク記念にリクエストさせていただいた平助×千鶴小説を斑鳩 零様に書いていただきました!
リクエストは『お土産をあげている平助君と千鶴ちゃん』です。
もうこの二人、可愛くて仕方ないです。
お互いがお互い強く想っていて、ほんの一週間でとっても淋しく感じている二人が素敵です!
特に平助君が千鶴ちゃんの膝がないとお昼寝が出来ないと言うあの言葉にやられました!!
そしてお土産に簪をプレゼントして、それに喜ぶ千鶴ちゃんが可愛い。
平助君に差してもらった簪を付けて、より一層可愛くなった千鶴ちゃんが目の前に見えるかのようです。
次のお出かけにはきっと、あの簪を付けて一緒にお出かけするんじゃないかと思うと思わず顔がにやけてしまいました(笑
こんなに素敵な小説を頂けて、私はとっても幸せ者です。
零さん、本当に素敵な甘い平千小説を下さり有り難う御座いました!!
そしてこれからもどうぞ宜しくお願い致します。
2008,10,14 水野佳鈴