君のとなり

通い慣れた部屋を訪れて、まず目に入ったのは薄暗い部屋で煌々と光るテレビを食い入るように見つめる幼なじみの姿。

いつもとは違う異様な光景に思わず足が竦み、部屋の入り口で動けなくなった。


「どうしてお前が映ってるんだ」


耳を澄ましてみてやっと聞こえるくらいの声。

初めは何を言われているのかわからなかった。
薄暗さに慣れてきてから始めて、映し出されているものが何なのか気付く。

息が止まるかと思った。
いや、止まってしまいたかった。

どうしたら良いのかわからなくてその場に立ち尽くす。
足下がガラガラと音をたてて崩れていくようだ。
これは墓場まで持っていくはずの過去だった。


「おい、何とか言えよ!」


突然の衝撃と共に喉元を息苦しさが襲い、激しく揺さぶられた。
どうやら胸ぐらを掴まれたまま壁に叩きつけられたらしい。
硬い壁に押し付けられた後頭部はとても熱い。

彼の彫りの深い切れ長の瞳が怒りの色に染まり、唇はわなわなと震えている。

揺れる視界には幼なじみが怒りに震える姿と、彼の肩越しのテレビ画面に映る裸の二人の男の姿が見えた。
厳つい男の腹の上に跨り腰を振る少年の姿は随分と見覚えがある。


「な、んで、、」


画面の中の男は紛れもなく、…俺だった。


思い出したくない過去の記憶が脳味噌の奥からずるずると引きずり出される。
噛み締めた唇からじわりと血が滲み、口の中に鉄の味が広がった。


「お前には、…関係ない」


努めて平静を装ったはずの自分の声は、掠れて驚くほど弱々しい。


「関係無い、だと…?」


感情が高ぶっているのか顔を赤くして俺の胸ぐらを手が白くなるほど握りしめている幼なじみの拳が見える。


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