5*

性器からまた先走りが漏れて、肛門を濡らしている。
こいつからは男を狂わすフェロモンか何かが出てるんじゃねえかと本気で思う。

(AV女優だってこんなにエロい体してねえぞ)

カラカラの喉を潤すように唾を飲み込めば一際大きな音でごくりと鳴り、吐息を吐き出せば行き場の無くなった欲が体の中で暴れて、血圧をあげた。

――まるで麻薬だ。


藍沢の唇に目が行って、吸い寄せられるように唇を寄せた。


もう少しで触れる、と思ったとき


『もっしも〜し!聞こえてますかぁ〜?』


スピーカーからキイチの甲高い声が響いて、自分の世界から引き戻された。

(俺は今何をしようとしていた…?)


「…うるせえ」

『返事くらいしてよね!あっくんがお兄さんに夢中なのは知ってるけど流石に土の上じゃ可哀想でしょ!!』

「………なんで知ってんだ」

『だってそこ丸見えだもん』

「あ?」

『B校舎の四階』


ぐるりと辺りを見回すと向かいの校舎から小さな光りが反射しているのが見えた。
キイチが手鏡を使って知らせているんだろう。
そこはここから少し離れた所にある、俺たちがいつもたまり場にしてる空き教室だった。


『見えたあ?』

「チッ、…ああ。青柳も居んのか」

『いるよー。脇で双眼鏡でお兄さんの顔ガン見してるー、…わっ何すんのさっ』

『いいから貸せ…おいコラ、淫乱子猫ちゃん一人占めたぁ随分じゃねえの。早くこっち連れてこいよな』

『ちょっと!もう返してよっ…もしもし?とにかく、そこでやってたら見つかるの時間の問題だよ!あっくん次停学になったらヤバいでしょ?まあ、用務員さん相手だから未処分の可能性高いけど…。移動しといた方が良くない?』


今の今まで藍沢を追いつめる事に夢中で気が付かなかったが確かにその通りだ。

今日は平日なので一般生徒はA校舎で授業を受けているはずだ。
うちは進学校だし、基本真面目な生徒が多いので見つかる心配は無いが、B校舎には生徒会室や風紀委員室、さらには理事室が入っていた。

このまま事に及ぶにはリスクがでかすぎる。
万が一見つかったら本当に面倒な事になりそうだ。
ここは素直にキイチの提案を聞き入れた方が利口だろう。
俺は冷静な男だからな、うん。


「…すぐ行く」

『手伝おうか?』

「いらん」

『あっそ、じゃあね〜』


ブツッと切れた携帯をズボンのポケットに仕舞い、藍沢の胸ぐらを掴んで体を起こしてやる。
ネクタイでギッチギチに縛られて、赤紫色になり始めてる腕の辺りと土まみれになったTシャツを軽く払ってやれば、藍沢は不思議そうにこちらの様子を伺っているみたいだった。


「……あ、の…」

「黙ってろ」

「わあっ!?な…、ちょっ、ひい…っ」


米を担ぐみたいに肩に抱え上げた瞬間に暴れ出したので、何も肌に付けてない尻をバチンと手加減無しに叩いた。
びくびくっと震えて体がしなる。


「暴れんな。放りだされてえのか」

「…う」

「ああ、裸にひん剥いて一差し500円て体に落書きした挙げ句、校庭にでも放り投げてやったら面白れえだろうなあ?」

「なっ…なな」

「嫌なら大人しくしてろ」

「…っ」


そう言って脅すとぴたりと大人しくなった藍沢に気を良くして、俺は存分にケツを撫でながら歩みを進めたのだった。




[ 5/21 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -